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海外サッカー

「バルサに居場所はない」と判断され約96億円でマンCに加入したニコ・ゴンサレス「悲劇なのはこのケースが例外ではなく、当たり前になってしまうこと」

下村正幸

2025.02.13

元スペイン代表のフラン・ゴンサレスを父に持つニコ。シティではどんなプレーを見せるのか。(C)Getty Images

元スペイン代表のフラン・ゴンサレスを父に持つニコ。シティではどんなプレーを見せるのか。(C)Getty Images

 自前で育てた選手が他のクラブで活躍することは、痛しかゆしだ。世界最高峰と言ってもいい育成機関「ラ・マシア」を経営の根幹に据えるバルセロナであればなおさらで、その出身選手の総称であるカンテラーノが流出すれば、毎回のように議論が持ち上がる。今冬に6000万ユーロ(約96億円)という高額の移籍金で、ポルトからマンチェスター・シティへ渡ったニコ・ゴンサレスももちろん例外ではない。

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 ラ・マシアウォッチャーの第一人者として知られるジャウマ・マルセ氏の言葉はファンのそんな心情を代弁している。

「ニコのケースは残念の一言だ。子供の頃から手塩にかけて育ててきたにもかかわらず、未熟であるという烙印を押されてバルサを離れた。バルサで成功するための資質をすべて備えた選手に成長したにもかかわらず、我々ではなく、シティが彼のサッカーを楽しむことになる」

 マルセ氏はさらに忍耐という言葉を繰り返し用いて、成長するために必要な時間を与えることの重要性を強調する。「引き留めることだけが忍耐を意味するわけではない。完全移籍、レンタル問わず放出する際に、買い戻しオプションを付帯させるのも忍耐だ。とりわけ中期的に才能を開花させる可能性があると期待される選手においては、選択肢の1つとすべきだ」

 ちなみにスペイン紙『AS』のフアン・ヒメネス氏によると、ニコ・ゴンサレスの場合、2023年夏の退団時に付帯していた3000万ユーロ(約48億円)の買い取りオプションは、ポルトが昨年、バルサに300万ユーロ(約4億8000万円)を支払ったことで消滅しているという。
 
 上層部は、昨年の時点でニコ・ゴンサレスの居場所はないと判断していた結果になるが、ジャーナリスト兼作家のジョアン・カニェテ・ベイル氏も同調する形で、スペイン紙『スポルト』のコラムで次のように見解を述べている。「バルサがカンテラーノに対して忍耐がないと言うのはフェアではない。現在のチームの顔ぶれを見ればそれは一目瞭然だ」

「バルサの中盤の陣容は、マルク・カサド、フレンキー・デ・ヨング、現在、怪我で戦線離脱中のマルク・ベルナル、ペドリ、ガビ、フェルミン・ロペス、パブロ・トーレで構成されている。そのうち4人はニコと同じカンテラーノで、ペドリとトーレは10代のうちに加入した。ニコがバルサにとどまっていたら、ベルナルは今もBチームでプレーし、今シーズンのラ・リーガでセンセーションを巻き起こしているカサドはバルサを追われていたかもしれない。ラ・マシアは、トップチームのニーズをはるかに上回る才能を輩出している」

 若手の台頭にもタイミングがある。ニコ・ゴンサレスの場合も、ロナルド・クーマンからシャビへの監督交代が分岐点となって、チーム内でのヒエラルキーが徐々に低下し、それが出場機会を求めて移籍する理由となった。カニェテ氏は、このニコ・ゴンサレスのケースを踏まえて、成長期にあるカンテラーノにフォーカスすべきスタンスを次のように説いている。

「ラ・マシアで育った全ての選手がバルサのトップチームでプレーできるわけではない。重要なのは、近年、資金難に陥った経緯やラ・マシアにコミットするクラブ文化を踏まえて、再び財務状況が好転した暁には、往々にして新戦力の獲得に回されていた投資額を、カンテラーノに充てるという意識を根付かせることだ。ニコがバルサ以外のチームで成功を収めたとしても悲劇ではない。悲劇となるのは、ニコのケースが例外ではなく、当たり前になってしまうことだ」

文●下村正幸

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