日本代表が世界一番乗りで2026年ワールドカップ(W杯)北中米大会の出場権を勝ち取った3月の国際Aマッチウィーク期間に、欧州ではUEFAネーションズリーグの準々決勝が行なわれ、名だたる強豪国同士がハイレベルな激戦を繰り広げた。4試合中3試合(ポルトガル対デンマーク、フランス対クロアチア、スペイン対オランダ)がホーム&アウェーの180分で決着がつかず延長戦にもつれ込み、残るドイツ対イタリアも1点差の攻防と、いずれも最後まで手に汗握るスリリングな展開だった。
昨夏のEURO2024での屈辱的なラウンド・オブ16敗退を受けて、システムと戦術コンセプトを見直してチームを再構築し、ネーションズリーグの6試合を通して新たなアイデンティティーを確立しつつあったイタリアは、格上のドイツに何とか最後まで食い下がった。しかし、力の差を埋めることはできずに2試合合計5ー4で敗退を喫している。
ドイツは前線の中核を担うカイ・ハバーツ、フロリアン・ヴィルツ、ニクラス・フュルクルク、イタリアもCFマテオ・レテギ、さらには攻撃のキープレーヤーであるアンドレア・カンビアーゾ、フェデリコ・ディマルコの両WBをそれぞれ故障で欠く状況のなか、陣容をやり繰りして今回の2試合を戦った。
3月20日にミラノのサン・シーロで行なわれた第1レグは、イタリアが9分に訪れた最初のチャンスをサンドロ・トナーリがものにして先制したものの、後半に2発のヘディングシュートで逆転に成功したドイツが先勝した。両チームのメンバーは以下の通り。
イタリア(3ー5ー2)
GK:ジャンルイジ・ドンナルンマ
DF:ジョバンニ・ディ・ロレンツォ、アレッサンドロ・バストーニ、リッカルド・カラフィオーリ
MF:マッテオ・ポリターノ(64分:ラウル・ベッラノーバ)、ニコロ・バレッラ(84分:ダビデ・フラッテージ)、ニコロ・ロベッラ(64分:サムエレ・リッチ)、トナーリ、デスティニー・ウドジェ
FW:モイゼ・ケーン(84分:ロレンツォ・ルッカ)、ジャコモ・ラスパドーリ(71分:ダニエル・マルディーニ)
ドイツ(4ー2ー3ー1)
GK:オリバー・バウマン
DF:ヨズア・キミッヒ、アントニオ・リュディガー、ヨナタン・ター、ダビド・ラウム(46分:ニコ・シュロッターベック)
MF:レオン・ゴレツカ、パスカル・グロス(90分:ロベルト・アンドリヒ)
OMF:ナディーム・アミリ(66分:ジェイミー・レベリング)、ジャマル・ムシアラ、レロイ・ザネ(82分:カリム・アデイェミ)
FW:ヨナタン・ブルカルト(46分:ティム・クラインディーンスト)
イタリアが42%、ドイツが58%というボール支配率が示す通り、試合は基本的にドイツがボールを持ち、イタリアはコンパクトなミドル/ローブロックでそれを受け止め、縦に速い攻撃で逆襲を狙うという展開だった。
ドイツはミドルサードまでは支配できるものの、10人全員を自陣まで戻して2ライン(DMとMF)間中央にスペースを与えないイタリアのブロック攻略に手こずり、GKドンナルンマを脅かす決定機が作れないまま前半を終える。ブンデスリーガでの好調を評価してユリアン・ナーゲルスマン監督が抜擢したCFブルカルト、右WGアミリというマインツ組が機能せず、トップ下に入ったムシアラ(個のクオリティーでは抜きん出ていた)の強引な仕掛け以外に効果的な攻め手を欠いた格好だった。
それを受けた37歳の若き指揮官は、後半開始からブルカルトを下げて194センチの大型CFクラインディーンストを前線に投入。これが早速功を奏し、49分にキミッヒのアーリークロスをクラインディーンストが頭で合わせて1ー1に追いつくと、76分には左CKからやはりキミッヒが蹴り出したボールを、ニアサイドに飛び出したゴレツカが頭でフリックしてそのままゴールに送り込んで逆転に成功する。
イタリアは、オープンプレーにおいては受け身になりながらもそれなりに試合をコントロールし、散発的な逆襲から3度の決定機を作り出したものの、それをゴールに結びつけられない。空中戦とセットプレーという弱点を「高さと重さ」で勝るドイツに衝かれて敗れた格好だった。
ルチャーノ・スパレッティ監督は試合後、「ドイツのポゼッションに押し込まれて後退する場面はあったが、力の差は感じなかった。相手は高さを活かしてゴールを決めたが、我々は決定機を活かせなかった。違いが生まれたのはそこ。次の試合も同じように戦えれば勝機はある」と語った。しかし、3日後にドルトムントで行なわれた第2レグは、まったく違う展開になった。
ドイツ(3ー4ー2ー1)
GK:バウマン
DF:リュディガー(77分:ヤン・ビセック)、ター、シュロッターベック
MF:キミッヒ、アンジェロ・スティラー(63分:アミリ)、ゴレツカ(63分:グロス)、マキシミリアン・ミッテルシュテット
OMF:ザネ(63分:アデイェミ)、ムシアラ(77分:アンドリヒ)
FW:クラインディーンスト
イタリア(3ー5ー2)
GK:ドンナルンマ
DF:フェデリコ・ガッティ(46分:ポリターノ)、バストーニ、アレッサンドロ・ブオンジョルノ
MF:ディ・ロレンツォ、バレッラ、リッチ(85分:マッティア・ザッカーニ)、トナーリ(68分:ラスパドーリ)、ウドジェ
FW:ケーン(85分:ルッカ)、マルディーニ(46分:フラッテージ)
イタリアがメンバーを4人入れ替えながらも第1レグと同じ3ー5ー2で臨んだのに対し、ドイツはより重心の高い3ー4ー2ー1を採用。立ち上がりから激しいマンツーマンハイプレスでイタリアのビルドアップに圧力をかけるアグレッシブな姿勢を打ち出す。
現在のドイツ代表はナーゲルスマンの下でポゼッション志向を高めているとはいえ、いざその気になれば、プレッシングの強度とインテンシティーの高さでも世界最高レベル。イタリアは後方からのビルドアップを試みるも、攻撃を組み立てるどころか相手の第1プレッシャーラインすら超えることができず、パスを3本とつなげないまま自陣でのボールロストを繰り返す最悪の状況に陥った。
スパレッティ監督は、DF陣の中で最もビルドアップに優れたカラフィオーリの不在(第1レグ終了間際の怪我で離脱)への対応に加え、空中戦対策も兼ねてガッティ、ブオンジョルノという高さはあるが技術的にプレス耐性の低いCBを3バックに起用したのだが、これが裏目に出た。
プレッシャーをかわしてボールを前に送ることができず、逆に追い込まれてミスを誘発する場面を繰り返し、一方的に自陣ゴール前に押し込められて何もできないまま、前半だけで3失点を喫するという惨状に陥った。前半のボール支配率38%、自陣でのボールロストが24回という数字がすべてを物語っている。
【動画】NL準々決勝のイタリア対ドイツ、第1レグと第2レグのハイライト!
昨夏のEURO2024での屈辱的なラウンド・オブ16敗退を受けて、システムと戦術コンセプトを見直してチームを再構築し、ネーションズリーグの6試合を通して新たなアイデンティティーを確立しつつあったイタリアは、格上のドイツに何とか最後まで食い下がった。しかし、力の差を埋めることはできずに2試合合計5ー4で敗退を喫している。
ドイツは前線の中核を担うカイ・ハバーツ、フロリアン・ヴィルツ、ニクラス・フュルクルク、イタリアもCFマテオ・レテギ、さらには攻撃のキープレーヤーであるアンドレア・カンビアーゾ、フェデリコ・ディマルコの両WBをそれぞれ故障で欠く状況のなか、陣容をやり繰りして今回の2試合を戦った。
3月20日にミラノのサン・シーロで行なわれた第1レグは、イタリアが9分に訪れた最初のチャンスをサンドロ・トナーリがものにして先制したものの、後半に2発のヘディングシュートで逆転に成功したドイツが先勝した。両チームのメンバーは以下の通り。
イタリア(3ー5ー2)
GK:ジャンルイジ・ドンナルンマ
DF:ジョバンニ・ディ・ロレンツォ、アレッサンドロ・バストーニ、リッカルド・カラフィオーリ
MF:マッテオ・ポリターノ(64分:ラウル・ベッラノーバ)、ニコロ・バレッラ(84分:ダビデ・フラッテージ)、ニコロ・ロベッラ(64分:サムエレ・リッチ)、トナーリ、デスティニー・ウドジェ
FW:モイゼ・ケーン(84分:ロレンツォ・ルッカ)、ジャコモ・ラスパドーリ(71分:ダニエル・マルディーニ)
ドイツ(4ー2ー3ー1)
GK:オリバー・バウマン
DF:ヨズア・キミッヒ、アントニオ・リュディガー、ヨナタン・ター、ダビド・ラウム(46分:ニコ・シュロッターベック)
MF:レオン・ゴレツカ、パスカル・グロス(90分:ロベルト・アンドリヒ)
OMF:ナディーム・アミリ(66分:ジェイミー・レベリング)、ジャマル・ムシアラ、レロイ・ザネ(82分:カリム・アデイェミ)
FW:ヨナタン・ブルカルト(46分:ティム・クラインディーンスト)
イタリアが42%、ドイツが58%というボール支配率が示す通り、試合は基本的にドイツがボールを持ち、イタリアはコンパクトなミドル/ローブロックでそれを受け止め、縦に速い攻撃で逆襲を狙うという展開だった。
ドイツはミドルサードまでは支配できるものの、10人全員を自陣まで戻して2ライン(DMとMF)間中央にスペースを与えないイタリアのブロック攻略に手こずり、GKドンナルンマを脅かす決定機が作れないまま前半を終える。ブンデスリーガでの好調を評価してユリアン・ナーゲルスマン監督が抜擢したCFブルカルト、右WGアミリというマインツ組が機能せず、トップ下に入ったムシアラ(個のクオリティーでは抜きん出ていた)の強引な仕掛け以外に効果的な攻め手を欠いた格好だった。
それを受けた37歳の若き指揮官は、後半開始からブルカルトを下げて194センチの大型CFクラインディーンストを前線に投入。これが早速功を奏し、49分にキミッヒのアーリークロスをクラインディーンストが頭で合わせて1ー1に追いつくと、76分には左CKからやはりキミッヒが蹴り出したボールを、ニアサイドに飛び出したゴレツカが頭でフリックしてそのままゴールに送り込んで逆転に成功する。
イタリアは、オープンプレーにおいては受け身になりながらもそれなりに試合をコントロールし、散発的な逆襲から3度の決定機を作り出したものの、それをゴールに結びつけられない。空中戦とセットプレーという弱点を「高さと重さ」で勝るドイツに衝かれて敗れた格好だった。
ルチャーノ・スパレッティ監督は試合後、「ドイツのポゼッションに押し込まれて後退する場面はあったが、力の差は感じなかった。相手は高さを活かしてゴールを決めたが、我々は決定機を活かせなかった。違いが生まれたのはそこ。次の試合も同じように戦えれば勝機はある」と語った。しかし、3日後にドルトムントで行なわれた第2レグは、まったく違う展開になった。
ドイツ(3ー4ー2ー1)
GK:バウマン
DF:リュディガー(77分:ヤン・ビセック)、ター、シュロッターベック
MF:キミッヒ、アンジェロ・スティラー(63分:アミリ)、ゴレツカ(63分:グロス)、マキシミリアン・ミッテルシュテット
OMF:ザネ(63分:アデイェミ)、ムシアラ(77分:アンドリヒ)
FW:クラインディーンスト
イタリア(3ー5ー2)
GK:ドンナルンマ
DF:フェデリコ・ガッティ(46分:ポリターノ)、バストーニ、アレッサンドロ・ブオンジョルノ
MF:ディ・ロレンツォ、バレッラ、リッチ(85分:マッティア・ザッカーニ)、トナーリ(68分:ラスパドーリ)、ウドジェ
FW:ケーン(85分:ルッカ)、マルディーニ(46分:フラッテージ)
イタリアがメンバーを4人入れ替えながらも第1レグと同じ3ー5ー2で臨んだのに対し、ドイツはより重心の高い3ー4ー2ー1を採用。立ち上がりから激しいマンツーマンハイプレスでイタリアのビルドアップに圧力をかけるアグレッシブな姿勢を打ち出す。
現在のドイツ代表はナーゲルスマンの下でポゼッション志向を高めているとはいえ、いざその気になれば、プレッシングの強度とインテンシティーの高さでも世界最高レベル。イタリアは後方からのビルドアップを試みるも、攻撃を組み立てるどころか相手の第1プレッシャーラインすら超えることができず、パスを3本とつなげないまま自陣でのボールロストを繰り返す最悪の状況に陥った。
スパレッティ監督は、DF陣の中で最もビルドアップに優れたカラフィオーリの不在(第1レグ終了間際の怪我で離脱)への対応に加え、空中戦対策も兼ねてガッティ、ブオンジョルノという高さはあるが技術的にプレス耐性の低いCBを3バックに起用したのだが、これが裏目に出た。
プレッシャーをかわしてボールを前に送ることができず、逆に追い込まれてミスを誘発する場面を繰り返し、一方的に自陣ゴール前に押し込められて何もできないまま、前半だけで3失点を喫するという惨状に陥った。前半のボール支配率38%、自陣でのボールロストが24回という数字がすべてを物語っている。
【動画】NL準々決勝のイタリア対ドイツ、第1レグと第2レグのハイライト!
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