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海外サッカー

“初代”メッシの後継者アンス・ファティ、クーラーボックスを蹴り飛ばす騒動後のスタメン出場で好パフォーマンスも「今夏の移籍を視野に入れ始めた」と報道

下村正幸

2025.05.01

このマジョルカ戦ではポジティブな結果を残したアンス・ファティ。(C)Getty Images

このマジョルカ戦ではポジティブな結果を残したアンス・ファティ。(C)Getty Images

 ラ・リーガ第33節のマジョルカ戦(バルセロナが1-0で勝利)で、アンス・ファティとラミネ・ヤマルがスタメン揃い踏みを果たした。バルサファンであればなかなか胸が躍る競演だが、ここまでその回数は限られている。ヤマルほどではないが、ペドリやガビといった他の若手アタッカー陣ともそうだ。言うまでもなくそれは、近年のバルサにおけるファティの出場機会の少なさに起因する。

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 シーズン開幕当初、ハンジ・フリック監督はファティの得点力に期待し、ロベルト・レバンドフスキのバックアッパー役を託す構想を持っていた。しかしフェラン・トーレスにその座を完全に奪われ、ここ数か月は快進撃を続けるチームの中で完全に蚊帳の外に置かれていた。

 マジョルカ戦の先発出場(左ウイングとして62分間プレー)も、後半に入ってウォーミングアップを命じられながら出番なしに終わった扱いに対し、ベンチ側に置いてあったクーラーボックスを蹴り飛ばすなど怒りを露わにしたセルタ戦の次の試合での出来事だった。

 否が応でもプレッシャーのかかる状況だったが、ファティはポジティブな印象を残した。現地識者の間でも、「ボールを要求しながら、安易なパスに走ることなく、方向転換とリズムチェンジによるドリブルでゴールに迫り、守備にも奔走した」(フリージャーナリストのリカルド・トルケマダ氏)、「素早くアクティブな動きを見せた。ここ最近ずっと物憂げに怪我が完治したのかしていないのかと自分でもよく分かっていない表情でプレーする姿が定番だったが、価値のある選手になれるところを示した。度重なる怪我に見舞われてから、このような彼を見るのは初めてだ。攻撃をサイドから活性化し、10番が主戦場にするエリアに顔を出し、周りと連携しながらチャンスを作ろうと試みた」(スペイン紙『AS』前編集長、アルフレッド・レラーニョ氏)など賛辞の声が相次いだ。
 
 ただ、それで事態が180度好転するほど単純ではない。2年前も今と同じようにチーム内での立場が不安定で移籍の是非が問われていたが、その2022-2023シーズンは、公式戦で10得点をマークしている。一方、今シーズンはここまで無得点だ。現地では冬の市場でいくつかのオファーを断り、残留にこだわったファティも、「今夏の移籍を視野に入れ始めた」といった報道が複数のメディアから出ている。

 ガビは「アンスは僕にとって兄弟のような存在だ」と発言し、セルタ戦で前述の騒動を起こしたにもかかわらず、マジョルカ戦ではファンから暖かい声援が飛んだ。

 トルケマダ氏はそんな現状を踏まえて、「ファティはバルセロニスモにとって永遠の未解決問題。彼のキャリアを振り返ることは心に刺さった棘のようなものだ」と言及する。

 ヤマルという弱冠17歳にして、リオネル・メッシの後継者を担うだけの資質を見せる新たな神童が現われても、その“初代”のファティは特別な存在であり続けている。ファンのそんな複雑な感情をよそに、取り巻く環境が今夏の移籍へと向かわせる中、一筋の光明が差し込んだマジョルカ戦の好パフォーマンスだった。

文●下村正幸

【動画】セルタ戦で出番がなくベンチで怒りをぶちまけるアンス・ファティ
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