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海外サッカー

「最強リバプール」を作り上げたクロップ監督の“源流”とは?磨き上げられた戦術センスの裏側に迫る

遠藤孝輔

2020.02.13

同じバーデン=ヴュルテンベルク州出身で、ともにマインツを指揮した経験を持つヴォルフガンク・フランク(左)、ラルフ・ラングニック(右)。(C)Getty Images

同じバーデン=ヴュルテンベルク州出身で、ともにマインツを指揮した経験を持つヴォルフガンク・フランク(左)、ラルフ・ラングニック(右)。(C)Getty Images

■クオリティーが上の相手にも勝てることを教えてくれた

 誤解すべきでないのは、クロップがラングニックのスタイルを模倣しているわけではないということ。リバプールをクラブ史上6度目のヨーロッパ制覇に導いた52歳の指揮官のメンターは、他にいる。2013年9月に逝去したヴォルフガンク・フランクだ。この事実はラファエル・ホーニクシュタイン著の自伝『ブリング・ザ・ノイズ』の中で、クロップ自身が「最も影響を受けた指導者」として綴っている。

 フランクはクロップが現役時代のマインツで師事した指導者だ。1993-94シーズンに当時2部のロート=ヴァイス・エッセンをDFBカップ決勝に導く快挙を成し遂げ、95年9月にマインツの監督に就任すると、このスモールクラブで革命を起こす。リベロ&マンツーマンディフェンスが主流だった当時のドイツ・サッカー界で4バック&ゾーンディフェンスを初めて導入。シーズン途中の就任(10節が初陣)ながら即座に戦術を浸透させ、2部最下位でシーズンを折り返したマインツに後半戦、最多勝点をもたらした。

 当時の大躍進に不可欠なツールだったのが、今では当たり前となったビデオ分析。フランクはその重要性にいち早く着目し、マインツ大学からひとりの若きアナリストを招聘した。まだ20代だったその人物の名はペーター・クラビエツ。後にマインツのチーフスカウト、ボルシア・ドルトムントおよびリバプールのアシスタントとして、指揮官クロップを支えることになるドイツ人だ。

 指導者として多大な影響を受けただけでなく、自身の運命共同体と邂逅するきっかけを作ってくれたフランクについて、クロップは後年「並外れた人物。選手個々のクオリティーが自分たちより高いチームにも勝てることを教えてくれた」と述懐している。
 
■4バック&ゾーンディフェンス名将サッキにインスパイア

 その恩師とラングニックが、まったく同じ指導者のサッカーを、それこそビデオが擦り切れるほど研究していたのは興味深い事実として挙げられる。

 ドイツ国内でも無名だった若き日のフランクとラングニックを魅了したのは、ゾーンディフェンスを世に知らしめたイタリアの名将アリーゴ・サッキである。フランク同様に、90年代後半のウルムで4バック&ゾーンディフェンスを用いていたラングニックは、指導者として駆け出しの頃に自身の師にあたるヘルムート・グロースとともに、サッキ率いるACミランの試合を徹底的に分析した(余談だが、ラングニックとグロースは自分たちの活動拠点であるバーテン=ヴュルテンベルク州でよくキャンプを張っていたディナモ・キエフの名将、ヴァレリー・ロバノフスキーからも影響を受けている)。
 

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