サッキのミランからインスピレーションを得たフランクとラングニックがその後、脱マンツーマンディフェンスという答に行き着いたのは必然だったわけだ。もっとも、フランクの頭の中には3バックは「フランツ・ベッケンバウアーのようなリベロがいてこそ機能するもの。そんな優秀な選手、マインツにいるわけがない」という考えもあったが。
フランクの話をもう少し続けるなら、現役時代の彼は73年夏にVfBシュツットガルトからAZアルクマールに移籍。オランダで1シーズンだけプレーした。その時に衝撃を受けたのが、そう、ヨハン・クライフ擁するアヤックス・アムステルダムのトータルフットボールだ。そして前述のとおり、現役引退後はサッキに傾倒していく。フットボールの歴史を変えた偉人たちに魅せられ、自身も母国で戦術の一大革命を起こした。それから20年以上の時が流れ、今度は愛弟子であるクロップが、モダンフットボールの潮流を形作っている。
ドイツ・サッカー界は輝かしい歴史を誇る一方で、これまで明確なゲームモデルに基づく戦術的アイデンティティーを確立した試しがなかった。90年代まではリベロ&マンツーマンディフェンスと不屈のメンタリティーといった個の力を拠り所としていたし、00年代半ばからはヨアヒム・レーブ代表監督がスペイン流のポゼッションサッカーを志向した。それが現在は、クロップとラングニックのチームが用いるストーミングが主流になりつつある。
同じバーデン=ヴュルテンベルク州出身というだけで、直接的な接点はないものの、サッキという共通のキーワードを持つラングニックが、愛弟子のクロップ率いるリバプールの発展に間接的ながら寄与している現実を、天国のフランクはどんな思いで見守っているだろうか。
文●遠藤孝輔
※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年2月6日号より転載
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フランクの話をもう少し続けるなら、現役時代の彼は73年夏にVfBシュツットガルトからAZアルクマールに移籍。オランダで1シーズンだけプレーした。その時に衝撃を受けたのが、そう、ヨハン・クライフ擁するアヤックス・アムステルダムのトータルフットボールだ。そして前述のとおり、現役引退後はサッキに傾倒していく。フットボールの歴史を変えた偉人たちに魅せられ、自身も母国で戦術の一大革命を起こした。それから20年以上の時が流れ、今度は愛弟子であるクロップが、モダンフットボールの潮流を形作っている。
ドイツ・サッカー界は輝かしい歴史を誇る一方で、これまで明確なゲームモデルに基づく戦術的アイデンティティーを確立した試しがなかった。90年代まではリベロ&マンツーマンディフェンスと不屈のメンタリティーといった個の力を拠り所としていたし、00年代半ばからはヨアヒム・レーブ代表監督がスペイン流のポゼッションサッカーを志向した。それが現在は、クロップとラングニックのチームが用いるストーミングが主流になりつつある。
同じバーデン=ヴュルテンベルク州出身というだけで、直接的な接点はないものの、サッキという共通のキーワードを持つラングニックが、愛弟子のクロップ率いるリバプールの発展に間接的ながら寄与している現実を、天国のフランクはどんな思いで見守っているだろうか。
文●遠藤孝輔
※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年2月6日号より転載
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