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Jリーグ・国内

ザーゴ新体制が抱えるリスクと可能性――伝統のスタイルにメスを入れた鹿島は、新戦術をどう消化するのか

小室功

2020.03.26

チーム始動から約2カ月半。ザーゴ監督が打ち出す新戦術は鹿島に何をもたらすのか。写真:田中研治

チーム始動から約2カ月半。ザーゴ監督が打ち出す新戦術は鹿島に何をもたらすのか。写真:田中研治

 鹿島は伝統的に4バックベースで戦ってきた。どちらかのSBが高い位置を取ったら、もう一方のSBは最終ラインに入り、なかに絞る。いわゆる“つるべの動き”を基調にしてきたので、現在トライしているビルドアップの手法とは明らかに異なる。

 それぞれの選手の立ち位置や距離感、動き方の違いに伴うパスルートの変化はお互いにイメージできても、いざ、それをピッチ上で表現するとなると一朝一夕にはいかないだろう。

「ビルドアップの指導はいちばん難しい。お互いのタイミングや意思疎通を図るために時間が必要だ」

 1月28日、ザーゴ新体制の初陣となったACLプレーオフの試合後、こう語っていたのが思い出される。

 ディフェンス陣の顔ぶれがガラリと変わり、その点もビルドアップの熟成に時間がかかっている理由だろう。右SBの広瀬陸斗、左SBの永戸勝也、杉岡大暉、CBの奈良竜樹の4選手が新加入。ここにきてプロ2年目のCB関川郁万が台頭し始めるなど、既存の戦力をふくめ、4バックの定位置争いは混沌としている。
 
 後方からのビルドアップを重視するぶん、そこに落とし穴もある。

 自陣に下がったボランチのところでボールを奪われると、その後ろはCBの2枚だけといった状況が想定され、一気にピンチになりやすい。Jリーグ開幕戦の広島戦では、そこを二度も突かれてしまった。

 ハイプレス対策は不可欠だが、ベテランボランチの永木亮太はこう語っている。

「もっとオートマチックにボールを動かせるようになれば、相手にとってつかまえにくいポゼッションができると思うけど、追求するスタイルを貫こうとして失点が増えてしまったら元も子もない。割り切るところは割り切る。無理をしないで、大きく蹴っておく。そういう判断も大事になってくる」

 ザーゴスタイルのピッチへの落とし込みは着実に進んでいるが、まだ初期段階に過ぎない。トライ&エラーを繰り返しながら、チームとしての最適解を見つけ出すための作業が今後も続く。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)

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