1998年7月8日 フランスW杯準決勝
vsクロアチア ○2-1
得点者/フランス=テュラム②
クロアチア=シュケル
初めて世界王者に輝いた自国開催の1998年ワールドカップ。4度目の挑戦にしてついに準決勝の壁を打ち破ったというだけでなく、チームを勢いづかせ、懐疑的に見ていた自国民を“その気”にさせたという点でも、クロアチア戦の逆転勝利がこの大会で最も重要な勝利だったと言えるだろう。
フランスはジダンを中心に試合序盤から主導権を握りながら、タイトな守備に手を焼きゴールを奪えない。すると後半開始直後に、この大会好調のダボル・シュケルに先制ゴールを決められてしまう。フランスの攻撃をしのぎ、数少ないチャンスを確実にモノにする――。クロアチアにとっては、まさに思い描いた展開だっただろう。91年にユーゴスラビアから分離独立した新興国とはいえ、シュケル、ズボニミール・ボバンら名手を擁するクロアチアはしたたかだった。
だが、そのわずか1分後。右SBのリリアン・テュラムがフランスに歓喜をもたらす。高い位置で激しくプレッシャーをかけて相手のパスミスを誘発すると、そのままエリア内に走り込んでパスをもらい、右足インサイドでゴールに押し込んだのだ。これで勢いづいたフランスはクロアチアを攻め立て、70分に再びテュラムが値千金の一撃。最後まで勝負を諦めないクロアチアを振り切り、2-1で勝利を収めた。
殊勲のテュラムは引退までにフランス代表歴代最多となる142キャップを刻んだが、代表キャリアを通じて奪ったゴールはこのクロアチア戦の2つだけ。まさに神懸った活躍で、母国を悲願のワールドカップ決勝に導いた。
2000年7月2日 EURO決勝
vsイタリア ○2延長1
得点者/フランス=ヴィルトール、トレゼゲ
イタリア=デルベッキオ
崖っぷちから土壇場のゴールで延長戦に持ち込み、ゴールデンゴールによる劇的な逆転勝利。まさにドラマチックな展開で、世界王者フランスがビッグトーナメント連覇という偉業を成し遂げた。
試合序盤から頼みのジダンを抑え込まれたフランスは、ファビオ・カンナバーロ、アレッサンドロ・ネスタ、マルク・ユリアーノの鉄壁の3バックと、絶好調のGKフランチェスコ・トルドの牙城を崩せない。55分に先制点を許すと、シルバン・ヴィルトール、ダビド・トレゼゲ、ロベール・ピレスと攻撃のカードを次々と切るも、ゴールは遠く、0-1のまま90分が経過。もはやイタリアの勝利は確実なものと思われた。
ヴィルトールの起死回生のゴールが決まったのは、タイムアップ目前の90+4分。意気上がるフランスは、延長戦に入ると攻勢を強め、精神的ショックに加え体力の消耗が激しいイタリアを押し込む。そして103分、左サイドを突破したピレスのセンタリングをトレゼゲが左足ボレーで合わせ、ゴールデンゴール。フランスがミラクルな逆転劇で二度目のEURO優勝を勝ち取った。
2018年6月30日 ロシアW杯ラウンド・オブ16
vsアルゼンチン ○4-3
得点者/フランス=エムバペ②、グリエーズマン、パバール
アルゼンチン=ディ・マリア、メルカド、アグエロ
欧州と南米を代表する2つのサッカー大国が真っ向からやり合い、両軍合わせて7得点という壮絶な撃ち合いを繰り広げただけではない。大会のハイライトと言えるスペクタクルなゴールがいくつも生まれたという点でも、記憶に深く刻まれる一戦だ。
13分にアントワーヌ・グリエーズマンのPKで先制したフランスだが、41分、アンヘル・ディ・マリアに目の覚めるようなミドルシュートを決められると、後半開始早々にもガブリエル・メルカドに得点を許し、逆転されてしまう。
だが57分、伏兵バンジャマン・パバールのファンタスティックな一撃がフランスに勢いをもたらす。左サイドからのマイナスのクロスをファーサイドで完璧に右足で捉え、バックスピンのかかった強烈なシュートをゴール左隅に突き刺したのだ。さらにここからは、まさにキリアン・エムバペ・ショー。64分、桁違いの初速とキレでゴール前の混戦を抜け出したエムバペが左足で逆転ゴールを決めると、その4分後、流れるようなカウンターアタックから最後は右サイドから猛然と走り込んだエムバペが流し入れ、4-2。試合を決めた。
両チームの「10番」の出来が勝敗を分けたとも言える。圧巻の2ゴールで世界に衝撃を与えたエムバペに対し、アルゼンチンのリオネル・メッシは2ゴールに絡んだもののインパクトに乏しかった。エムバペ時代の到来を予感させる、エポックメイキング的な一戦であったとも言えるだろう。
文●大類聡
vsクロアチア ○2-1
得点者/フランス=テュラム②
クロアチア=シュケル
初めて世界王者に輝いた自国開催の1998年ワールドカップ。4度目の挑戦にしてついに準決勝の壁を打ち破ったというだけでなく、チームを勢いづかせ、懐疑的に見ていた自国民を“その気”にさせたという点でも、クロアチア戦の逆転勝利がこの大会で最も重要な勝利だったと言えるだろう。
フランスはジダンを中心に試合序盤から主導権を握りながら、タイトな守備に手を焼きゴールを奪えない。すると後半開始直後に、この大会好調のダボル・シュケルに先制ゴールを決められてしまう。フランスの攻撃をしのぎ、数少ないチャンスを確実にモノにする――。クロアチアにとっては、まさに思い描いた展開だっただろう。91年にユーゴスラビアから分離独立した新興国とはいえ、シュケル、ズボニミール・ボバンら名手を擁するクロアチアはしたたかだった。
だが、そのわずか1分後。右SBのリリアン・テュラムがフランスに歓喜をもたらす。高い位置で激しくプレッシャーをかけて相手のパスミスを誘発すると、そのままエリア内に走り込んでパスをもらい、右足インサイドでゴールに押し込んだのだ。これで勢いづいたフランスはクロアチアを攻め立て、70分に再びテュラムが値千金の一撃。最後まで勝負を諦めないクロアチアを振り切り、2-1で勝利を収めた。
殊勲のテュラムは引退までにフランス代表歴代最多となる142キャップを刻んだが、代表キャリアを通じて奪ったゴールはこのクロアチア戦の2つだけ。まさに神懸った活躍で、母国を悲願のワールドカップ決勝に導いた。
2000年7月2日 EURO決勝
vsイタリア ○2延長1
得点者/フランス=ヴィルトール、トレゼゲ
イタリア=デルベッキオ
崖っぷちから土壇場のゴールで延長戦に持ち込み、ゴールデンゴールによる劇的な逆転勝利。まさにドラマチックな展開で、世界王者フランスがビッグトーナメント連覇という偉業を成し遂げた。
試合序盤から頼みのジダンを抑え込まれたフランスは、ファビオ・カンナバーロ、アレッサンドロ・ネスタ、マルク・ユリアーノの鉄壁の3バックと、絶好調のGKフランチェスコ・トルドの牙城を崩せない。55分に先制点を許すと、シルバン・ヴィルトール、ダビド・トレゼゲ、ロベール・ピレスと攻撃のカードを次々と切るも、ゴールは遠く、0-1のまま90分が経過。もはやイタリアの勝利は確実なものと思われた。
ヴィルトールの起死回生のゴールが決まったのは、タイムアップ目前の90+4分。意気上がるフランスは、延長戦に入ると攻勢を強め、精神的ショックに加え体力の消耗が激しいイタリアを押し込む。そして103分、左サイドを突破したピレスのセンタリングをトレゼゲが左足ボレーで合わせ、ゴールデンゴール。フランスがミラクルな逆転劇で二度目のEURO優勝を勝ち取った。
2018年6月30日 ロシアW杯ラウンド・オブ16
vsアルゼンチン ○4-3
得点者/フランス=エムバペ②、グリエーズマン、パバール
アルゼンチン=ディ・マリア、メルカド、アグエロ
欧州と南米を代表する2つのサッカー大国が真っ向からやり合い、両軍合わせて7得点という壮絶な撃ち合いを繰り広げただけではない。大会のハイライトと言えるスペクタクルなゴールがいくつも生まれたという点でも、記憶に深く刻まれる一戦だ。
13分にアントワーヌ・グリエーズマンのPKで先制したフランスだが、41分、アンヘル・ディ・マリアに目の覚めるようなミドルシュートを決められると、後半開始早々にもガブリエル・メルカドに得点を許し、逆転されてしまう。
だが57分、伏兵バンジャマン・パバールのファンタスティックな一撃がフランスに勢いをもたらす。左サイドからのマイナスのクロスをファーサイドで完璧に右足で捉え、バックスピンのかかった強烈なシュートをゴール左隅に突き刺したのだ。さらにここからは、まさにキリアン・エムバペ・ショー。64分、桁違いの初速とキレでゴール前の混戦を抜け出したエムバペが左足で逆転ゴールを決めると、その4分後、流れるようなカウンターアタックから最後は右サイドから猛然と走り込んだエムバペが流し入れ、4-2。試合を決めた。
両チームの「10番」の出来が勝敗を分けたとも言える。圧巻の2ゴールで世界に衝撃を与えたエムバペに対し、アルゼンチンのリオネル・メッシは2ゴールに絡んだもののインパクトに乏しかった。エムバペ時代の到来を予感させる、エポックメイキング的な一戦であったとも言えるだろう。
文●大類聡