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Jリーグ・国内

イニエスタの電撃入団から3年。ヴィッセル神戸の“バルサ化”はどうなった? 頓挫、継続、あるいは――

白井邦彦

2021.04.18

神戸は紆余曲折を経て、クラブOBでもある三浦監督の指揮の下、チーム強化を進めている。(C) SOCCER DIGEST

神戸は紆余曲折を経て、クラブOBでもある三浦監督の指揮の下、チーム強化を進めている。(C) SOCCER DIGEST

 バルサ化と表現できるのは、おそらく「元バルセロナの選手たち」を補強した点に限られる。その観点で言えば、神戸のバルサ化は2019年の後半にひとつの終焉を迎えた。ベルギー代表DFのフェルマーレンが入団して以来、加入していないからだ。

 ここでスタイルの変遷について見ていきたい。まず、神戸は2018年秋にリージョ体制が発足し、ボールを保持した中で攻め続けるスタイルへと大きく舵を切った。この時に根本的な考え方がもたらされた。

 そして吉田孝行体制を経て、トルステン・フィンク体制へ。この過程で、戦術がより整理され、カウンターを含めた臨機応変なスタイルへと昇華し、クラブ初タイトルとなる天皇杯制覇も成し遂げた。先に述べた「バルサ化の終焉」とともに、ひとつの理想的なスタイルが構築できた時期と言えるだろう。

 コロナ禍の影響で進化が足止めされ、2020年9月にはフィンク氏が電撃退任。直後に三浦淳寛氏が新監督に就任し、現在も改革を進めている。第1期をリージョ体制とするならば、吉田・フィンク体制が第2期、三浦体制が第3期となる。

 戦い方を比較すると、第1期は相手陣内でロンド(日本では鳥籠と称される練習時のボール回し)を展開するようなスタイルだった。ここでポゼッションに必要な考え方やスキルを身につけたと考えられる。
 
 第2期はポゼッションを軸に、ハイプレス&ショートカウンターといった速い展開を加えてゴールを量産した。一方で失点数が減らず、勝ったり負けたりを繰り返した。そして現在の第3期はハイプレスの要素を加えている。

 一見、お手本としたバルセロナのようなサッカーやリージョ氏が持ち込んだスタイルとはかけ離れている。だが、根底に流れているものは同じだ。

 例えば、リージョ氏が口にしていた「ボールを奪われたらすぐに取り返し、常に相手を自陣に押し込む」という理想は、三浦監督の言葉に置き換えると「攻守の切り替えを速くする」「守備の強度を高める」になる。あるいは、自分たちの意図する場所にボールを運び、試合を有利に進めるというリージョ氏の考えは、三浦監督の「立ち位置の修正」「どこにボールを運ぶのか」といった言葉に通ずる。

 神戸のバルサ化がどうなったかと問われれば、答えは「継続中」になるだろう。ボールをすぐに奪い返せるようになりつつある中で、現チームには、まもなく怪我で戦線離脱中だったイニエスタが復帰する。それを加味すれば、むしろ「進化している」が正解である。

取材・文●白井邦彦(フリーライター)
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