オシム監督は以前、「楽観主義的な考えかもしれないが、もしイタリアW杯でアルゼンチンにPK戦で負けることなく、準決勝や決勝に進出していたら、ユーゴスラビアで何が起こったのだろうかと考えることがある。もし、我々が世界チャンピオンになっていれば、戦争は起こらなかったのではないだろうか。政治家ではなく、サッカー選手が権力を握っていたとしたら、その後にユーゴで起こったことは、決してなかっただろう」と語っている（セルビア・メディア『ATV』より）。
  　こうした経緯がある中、今回、セルビア・サッカー協会は公式サイトで大々的にオシム監督の訃報を取り上げ、「旧ユーゴスラビア最高の指導者のひとりであり、常に時代を先取りし、その偉大さで国全体から尊敬されていた。雄弁で独創的、そしてサッカーに忠実な男であり、ゲームに多くのものをもたらした」と綴り、その功績を称えた。

　そんな彼の下で背番号10としてピッチ上で数々の伝説を創成し、現在はセルビア代表監督として今年末のカタール・ワールドカップに向けて準備を進めている“ピクシー”ドラガン・ストイコビッチは、偉大な恩師に向けて以下のようにメッセージを発している。

「オシム監督は、私のキャリアに大きな影響を与えた。彼とは、素晴らしい仕事ができた。イタリアW杯で経験したこと全てが、特別な思い出として残っている。彼のことは、賢く、素晴らしい直感を持ったサッカーの戦術家として記憶している。イビチャ・オシムとは、旧ユーゴスラビアのサッカーにおいてで最も重要な名前のひとつであり、そのように記憶されていくだろう」

　そのピクシーとは大親友であり、レッドスター、ユーゴ代表で見事なコンビネーションを披露して、母国ユーゴの分裂後はモンテネグロ・サッカーの顔として要職を歴任したデヤン・サビチェビッチは、現役時代には起用をめぐってオシム監督との関係がうまくいかない時期も経験したが、今回、セルビア・メディア『Telegraf』から訃報を伝えられた際には、「何だって？　何も言えない……何も言えない。……泣いてはいけない」と声を発するのが精一杯なほどの狼狽ぶりを見せたという。

構成●THE DIGEST編集部
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