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海外サッカー

【ブカツへ世界からの提言】体罰とサッカーは相いれない。その理由は――日本の“悪しき伝統”をスペイン人記者はどう見る?

THE DIGEST編集部

2022.06.30

独自の育成システムによって、国際的な競争レベルを高めているスペイン。そのなかで“ブカツ”の存在感はほとんどない。(C)Getty Images

独自の育成システムによって、国際的な競争レベルを高めているスペイン。そのなかで“ブカツ”の存在感はほとんどない。(C)Getty Images

 スペイン・サッカー界の育成システムの特徴としてトップクラブを頂点とするピラミッド構造で成り立っている点が挙げられる。そこに学校のクラブ活動が入り込む余地はない。草の根レベルでは、地域の関係機関が連携して育成システムを構築し、その恩恵を受ける形で無数のクラブが存在する。サッカーはもちろんスポーツをするのは、市民の権利として考えられている。

 人口25万人程度の都市の場合、各クラブに所属する選手に均等に練習する機会が与えられるように、平日、市内にある12~15のグラウンドが割り当てられる。そして週末には、プレベンハミン(6・7歳)からフベニールの最終年(18歳)に至るまで、その地域を統括するサッカー連盟が配布するスケジュールに従って試合が開催される。

 どの都市にもより良質なトレーニング環境を提供するクラブや、よりレベルの高いリーグに所属するクラブというものは存在する。小規模クラブに所属する選手にとっては、そこが一つの到達点でもある。優秀な選手はさらにレベルの高い環境で自分を磨きたいと門を叩く。

 その辺りの事情についてバラジョブレ氏は、「両親が連れてくるケースも少なくない。目立った活躍を見せている選手はトライアルをして、基準に達すればそのままうちでプレーすることになる」と説明する。同時にウラルのようなクラブはトップクラブのカンテラ予備軍という役割も担っている。
 
 例えば、ルーカス・バスケスは、フベニール1年目を迎えようとしていた矢先にマドリーに移籍した。またラ・リーガの1部や2部のクラブはウラルのようなクラブと優秀な選手の獲得優先権と引き換えに、金銭的な支援をするという内容で提携を締結するのが通例となっている。

 こうしたピラミッド構造を土台に、スペインは世界でも有数の育成大国としての地位を長年にわたって確立してきた。1990年代中頃まではあまり目立った成績を残していなかったが、育成システムが整備されて以降は U-17やU-19スペイン代表が欧州のアンダーカテゴリーの大会を席巻している。

 このスペイン・サッカーの躍進の背景にあるのがコーチングスクールの充実であり、その取り組みは常にクラブ主導で促進されてきた。翻って部活はレクリエーションという位置づけにとどまり、学校同士によるトーナメント戦も存在しないのである。

文●ファン・L・クデイロ(エル・パイス紙記者)
翻訳●下村正幸

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