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海外サッカー

欧州残留も探っていた名手スアレスはなぜ母国復帰? “奇跡”を起こしたのはサポーターたちの愛だった「浪漫は健在である」【現地発】

チヅル・デ・ガルシア

2022.08.10

露店で非公式グッズを売る人たちも。この女性が手にするスアレスのキャップは飛ぶように売れたという。(C)Chizuru de GARCIA

露店で非公式グッズを売る人たちも。この女性が手にするスアレスのキャップは飛ぶように売れたという。(C)Chizuru de GARCIA

 欧州残留の可能性を探りつつ、MLSクラブからのオファーを前向きに検討していたスアレスも、この熱烈なラブコールには魂を大きく揺さぶられた。

 そして、直接交渉のためにスペインへやって来たフエンテス会長と話し合い、SNSを通じて自ら古巣復帰を公表したのは、「ナシオナルから連絡がない」と不満げに呟いてから3週間後の7月26日のことだった。

 それから5日後、スアレスはウルグアイの首都モンテビデオに到着。ナシオナルの本拠地グラン・パルケ・セントラル(GPC)で行なわれたお披露目イベントで、スアレスは大観衆の前でマイクを渡されるや、自分がなぜその場にいるのかを明確にした。

「トリコロール(ナシオナルの愛称)の皆さん、そしてウルグアイの皆さん、こんにちは。何よりもまず、感謝の気持ちを伝えたいです。僕がここにいるのは、あなたたちのおかげなのですから」
 
 その言葉に触発されたサポーターが「俺たちはルイス・スアレスに導かれてウイニングランをするのだ」と大合唱して沸き上がり、当のスアレス本人はちょっと照れた顔でスタンドを見渡した。まさか自分がこのタイミングで16年ぶりに古巣に戻れるとは想像もしていなかったに違いない。彼がその「まさか」を現実のものにしてみせたサポーターの愛を初めて肌で感じたのはこの時だった。

 契約は今年12月までの5月。その間にカタール・ワールドカップが入るため、実際にナシオナルでプレーする期間は3か月ほどしかない。サポーターとスアレスにとっては時間制限が設けられた「束の間の恋」となるが、その間にウルグアイ1部リーグ後期とコパ・スダメリカーナで優勝は狙える(※その後コパ・スダメリカーナは準々決勝で敗退)。

 このロマンチックで情熱的なドラマの始まりをこの目で見たい。SNSをスアレスの顔で埋め尽くし、古巣に呼び戻すことに成功したサポーターの熱さを現地で体感したい──そう思った私はいてもたってもいられなくなり、スアレス復帰後の最初の試合を観るためモンテビデオに飛んだ。

 復帰デビュー戦となったのは、8月2日に行なわれたコパ・スダメリカーナ準々決勝1stレグのナシオナル対アトレチコ・ゴイアニエンセ戦。クラブの広報担当者アドルフォ・ビデガインによると、チケットは完売し、34000人収容のGPCは満員御礼とのことだった。

 スタジアム周辺の売店ではスアレス関連の様々な非公式グッズが販売され、その多くには復帰祈願キャンペーンで使われた例のスアレスの画像がプリントされていた。Tシャツにソックスまであったなかで、実際に手にしていた人が多かったのが、キャップだ。販売していた女性に言わせると、この画像は「ナシオナルのサポーターの力とスアレスへの愛を示すシンボルのようなもの」という。1つ200ペソ(約660円)という手頃な値段も相まって、飛ぶように売れていた。
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