オシムはウォーミングアップからメインに入るところでは、「見ること」「判断すること」といった、常に頭を動かして考えながらやらないとうまく回らないトレーニングを組み、メインへと移行。そしてゲーム形式になると、伝えるべき局面で的確に練習を止めて、選手の印象に残していった。
さじ加減やバランスのとり方がうまいのも指導者・オシムの凄さの一つであるわけだが、羽生は一人ひとりの選手を細かく観察していたと熱弁を振るう。
「僕が思う指導者の資質として大切だと思うのが観察力というのがあると思うんです。オシムさんは本当に一人ひとりをすごい観察していたし、誰と誰がいい関係なのかということから、個々の選手のネガティブな部分じゃなくて、ポジティブなところを見つけるのが、とてもうまかった。
『この選手の評価はこう言われてるけど、俺はこう思うな』っていうオシムさんなりの物差しがあって、この強みを、こうやって掛け合わせていったらいいチームになるという手腕にすごい長けていた人だった。
僕の場合、『お前なんかプロになっても3年ぐらいで終わるよ』って言われてた選手だったんで、その中でオシムさん来てくれて、『こういうプレーができれば、十分チームにとってメリットになる』ってたまに優しく言われた。罰走とかもありましたけどね(苦笑)。でもたまに飴をくれて。いつも選手をすごく観察してて、悪いところがあっても、強みでどうやろうかなって考えてくれる人なんだろうなっていうのをすごく感じています」
ドイツの指導者業界では、指導者とは選手にとって伴走者としての資質が欠かせないとされている。隣にいてくれるという安心感、後ろで支えてくれるという信頼感。そうした姿勢や態度があるからこそ、どんな激励も心に響き、受け止めようという思いになる。グラスルーツであっても、プロの世界であっても、忘れてはならない大事な話ではないだろうか。
取材・文●中野吉之伴
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『この選手の評価はこう言われてるけど、俺はこう思うな』っていうオシムさんなりの物差しがあって、この強みを、こうやって掛け合わせていったらいいチームになるという手腕にすごい長けていた人だった。
僕の場合、『お前なんかプロになっても3年ぐらいで終わるよ』って言われてた選手だったんで、その中でオシムさん来てくれて、『こういうプレーができれば、十分チームにとってメリットになる』ってたまに優しく言われた。罰走とかもありましたけどね(苦笑)。でもたまに飴をくれて。いつも選手をすごく観察してて、悪いところがあっても、強みでどうやろうかなって考えてくれる人なんだろうなっていうのをすごく感じています」
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