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海外サッカー

ブラジル国民が愛想を尽かしたW杯の涙。責務を放棄して“絆”も失ったネイマールの物語は終わりに近づいている【現地発】

THE DIGEST編集部

2023.01.14

パリSGに復帰してから他界したペレへのオマージュを込めたTシャツを着たネイマール。しかし、これも周囲からは疑惑の目を向けられている。(C)Getty Images

パリSGに復帰してから他界したペレへのオマージュを込めたTシャツを着たネイマール。しかし、これも周囲からは疑惑の目を向けられている。(C)Getty Images

 W杯でのネイマールにブラジル人は本当にがっかりさせられた。彼が大会初戦(セルビア代表戦)右足首を痛め、決勝トーナメント1回戦(韓国代表戦)まで欠場したからではない。最大の理由はクロアチア戦のPKにある。

 絶対ではないが、PK戦の多くはチームの柱となる選手が最初にボールを蹴る。実際、アルゼンチン代表ではリオネル・メッシが蹴り、フランス代表はキリアン・エムバペ、オランダ代表ならフィルジル・ファン・ダイクが務めた。ところがネイマールは1番目のキッカーを拒否。彼が希望したのは5人目だったのだ。

 自分が最後のシュートを決めてブラジルの勝利が決まり、駆け寄る仲間たちと歓喜に浸る――。そんなお花畑のようなストーリーを彼は脳裏で描いていたのかもしれない。しかし、エースが先頭を務めなかった結果、何が起こったか。W杯初参戦の、それも途中交代でピッチに立った22歳のロドリゴが大役を仰せつかり、そして外した。さらには普段はPKを蹴らないマルキーニョスも失敗した。結局、ネイマールにまで順番が回ってこないうちにブラジルは負けた。彼は自分の責務を放棄したのだ。

 この時、敗れたのはブラジルではない。私はネイマールだったと思う。いろいろありながらも、彼に期待を寄せていたブラジル人が抱いた“最後のリスペクト”を失った。
 
 人々の心が彼から離れる原因は、ピッチ内の振る舞いだけに限らない。先述のパーティー三昧もそうなのだが、ネイマールは以前から右派として知られるボルソナロ前大統領の支持を公言していたのも理由のひとつと言えよう。

 それは自体は彼の意見であり、サッカー選手が政治に関心を持つのは悪いことではないと思う。ただ、国民を怒らせたのは「ボルソナロ大統領のためワールドカップを勝ち取る」と公言したからだ。ブラジル代表である以上、反対派の心情も慮るべきではあったが、そういうことがネイマールにはわからないのである。

 そしてここにきての極めつけが、昨年12月29日に他界したペレの葬儀での対応だった。

 2人は同じサントス出身の選手だ。無論、英雄との絆は現役選手の中では誰よりも強い。少年の頃からペレに目をかけてもらっていたネイマールほどペレとのツーショットが多い選手もいないだろう。ペレはこの世を去る数日前にも、自身と同じ代表77ゴールを達成したネイマールに祝福のメッセージを送っている。

 そんなペレの葬儀にネイマールは参列しなかったのである。その理由を当人はパリ・サンジェルマン(パリSG)が休みをくれなかったからとしたが、タイミング悪くエムバペとハキミがオフを利用してニューヨークへの旅行に行っていることが明るみになり、それがウソだということがバレてしまったのである。おまけにネイマールは葬儀の時間にもパーティーを開き、陽気に楽しんでいたというのも発覚している。
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