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Jリーグ・国内

常勝の宿命を背負った2年半――酸いも甘いも経験した大岩剛監督が鹿島に残したレガシー

小室功

2020.01.04

新国立競技場での決戦では神戸に敗れたが、大岩監督が鹿島にもたらした功績は決して色褪せない。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

新国立競技場での決戦では神戸に敗れたが、大岩監督が鹿島にもたらした功績は決して色褪せない。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 タイトルを義務付けられる鹿島の監督に就任したのは、2017年5月31日のことだった。シーズン序盤からチーム状態がなかなか上向かず、また、ACLラウンド16での敗退も重なり、石井正忠監督との契約が解除された。その後任として大岩コーチが内部昇格したのだった。

「シーズン途中での監督就任なので、周りから“大変じゃないか”といわれるけれど、チームが難しいときにこういう話をいただいて、逆に光栄に感じている。プレッシャーはあるけれど、覚悟と責任をもって取り組んでいきたい」と、腹をくくっていた。

 初采配は就任からわずか4日後の広島戦(Jリーグ第14節)だった。アウェーに乗り込んでの一戦を3-1で勝利し、好スタートをきる。そこから5連勝とチームを勢いづかせ、ひとつの引き分けを挟んで、さらに3連勝。およそ2か月にわたって“負け知らず”を演じた。

 鹿島に移籍してきて2年目の若手ボランチ、三竿健斗(当時21歳)をスタメンに定着させるなど、チーム改革に着手した。

 攻守にアグレッシブなサッカーを展開する新生・鹿島は第21節の時点で、首位に立つと、その勢いのままに快走し続けた。ところが、ラスト2試合でまさかの失速。ともにスコアレスドローで終え、追いかけてくる川崎に最後の最後に勝ち点72で並ばれ、得失点差で首位を明け渡す結果となった。

「チームを優勝に導けなかったのは(監督としての)自分の経験不足」
 
 最終節となったアウェーでの磐田戦のあと、憔悴した表情で、言葉を絞り出す大岩監督がいた。敗軍の将はやはり多くを語らない。つみかけていた優勝を逃した責任を一身に背負っていた。

 地獄を味わった。だが、その11か月後に夢のような歓喜が待っていようとはこのときには思いもしなかっただろう。

 鹿島での監督人生のハイライトといえば、やはり2018年のACL初制覇だ。大願成就の瞬間に大岩監督は立ち会い、クラブの歴史にその名を残した。

 決勝の相手はイランの強豪、ペルセポリスだ。11月3日、ホームでの第1戦に2-0で快勝した鹿島は1週間後のアウェーゲームに臨んだ。
 

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