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海外サッカー

ドイツを追い詰めイタリアを一蹴したスイス「躍進の秘密は“流動性”」、準々決勝のイングランド戦で注目すべきポイントは…【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.07.03

 イタリア戦の37分にフロイラーが決めた先制点は、流動的な攻撃の典型というべき形から生まれたもの。人に引っ張られる傾向が強く、相互にカバーし合う意識が希薄なイングランドの最終ラインは、同じような危機に陥らないよう十分注意する必要があるだろう。中盤でバランサー機能を果たしているデクラン・ライスが、後方から入り込んでくる敵をしっかり捕まえられるかが、ひとつの戦術的なポイントになりそうだ。

 スイスの中核をなすフロイラー、エービシャー、エンドイェはいずれも、2023-24シーズンのセリエAで、流動的なポジションチェンジを武器に5位に躍進し、新シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を勝ち取ったボローニャ所属。スイスのサッカーが、そのボローニャと戦術的な共通性が少なくないのは、決して偶然ではない。

 ボローニャとの共通点を挙げれば、流動性の高い攻撃と並ぶもうひとつのそれが強度の高いマンツーマンのハイプレス。敵のビルドアップの起点となる最終ライン、さらにバックパス時にはGKにまでアグレッシブにプレッシャーをかけていくことで、ミスを誘って高い位置でボールを奪回する、あるいは仕方なくロングボールを蹴らせることが狙いだ。ドイツやイタリアがこのハイプレスを前にして小さくない困難に陥ったのは記憶に新しい。
 
 スイスのゲームプランで特徴的なのは、立ち上がりからアグレッシブなハイプレスで相手の出鼻をくじき、その勢いで試合の流れを手元に引き寄せて、前半のうちに先制する狙いを明確に持っている点だ。今大会の4試合中、スコットランド戦を除く3試合で前半に先制点を挙げているだけでなく、先制を許したスコットランド戦でも前半のうちに同点に追いつき試合を振り出しに戻している。

 リードして後半を迎えることで、体力的な消耗からプレー強度が下がらざるをえない最後の20~30分は、プレッシングの開始点を下げて受けに回り、精神的な優位を保って試合をコントロールすることが可能になる。受けに回った際も、コンパクトな5ー4ー1ブロックで最も危険な中央ゾーンにきっちり蓋をして、2ライン(DFとMF)間で前を向かせない狙いが徹底されている。そのブロック守備は、イタリアはもちろんドイツでさえ攻略に苦しんだほどの堅固さを持っている。

 スイスに弱点があるとすれば、先に触れた後半ラスト20~30分にプレス強度が下がること、さらにアカンジ、シェアを除くと空中戦に強い選手がいないことに起因するセットプレー守備の脆さだ。そう考えれば、地上戦で不利に立たされてもセットプレーで対抗し、60分過ぎまでにリードするか、あるいは同点の状況を保つことができれば、ラスト30分で攻勢に転じてとどめを刺すことも可能だ。そのあたりがスイス対イングランドの大きな見どころになるかもしれない。

文●片野道郎

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