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Jリーグ・国内

矢板中央「谷間の世代」は4強の壁を破れるか。“サッカー好きの集まり”が大化けした要因とは?

小室功

2020.01.09

 2009年、17年に続き、同校史上3回目の4強入りを果たしたが、もちろん満足していない。目指すは初の決勝進出、そしてその先の全国初制覇。

 1月11日、“埼スタ”でぶつかるのは快足ドリブラーの松村優太(鹿島入り内定)を擁し、圧巻の攻撃力を披露する静岡学園(静岡)だ。大会得点王のトップに並ぶFW岩本悠輝をはじめ、ここまで15得点を叩き出している。

 際立つ攻撃力もさることながら、見逃せないのはやはり4試合無失点という堅守だろう。手強い相手であるのは明らかだ。

「うまい選手はいないけれど、前線からハードワークして戦うのが私たちのモットー。足が止まったら、次の選手がいる。だから、立ち上がりから飛ばしていけ、と。駅伝ではないけれど、みんなでバトンをつなぎながら、ひたむきに走り続ける全員サッカーをやろうと話している」(高橋監督)

 そこを、どこまで表現できるかが、勝負の大きなカギを握る。

 矢板中央のベンチにふと目をやると、すっかりおなじみの光景が飛び込んでくる。歴戦の将とたたえられる古沼貞雄アドバイザーが座っているのだ。改めて紹介するまでもないだろう。伝統校である帝京(東京)の監督時代に6回の選手権制覇を成し遂げた、まさに勝負師だ。
 
 古沼アドバイザーは、こういって不敵な笑みを浮かべている。

「交代で出ていく選手がね、いい仕事をしてくれるんだよ」

 矢板中央OBからの朗報もまたチームを元気づける。現在、大学4年生の4選手が次々にJクラブ入りを決めたのだ。

 駒澤大のキャプテンで、DFの星キョーワァンが横浜FC、東洋大のキャプテンで、ボランチの坪川潤之が長野、立正大のFWで、2019年度の関東大学リーグ得点王を獲得した人見拓哉がFC琉球、そして2019年度の大学三冠を成し遂げた最強・明治大の主力DFとしてプレーした川上優樹が群馬に進む。

 この話題が出たとき、報道陣に囲まれていた高橋監督は、パッと顔をほころばせた。

 日本のサッカー界に貢献するような人材を一人でも多く輩出すること、チームとして輝かしい実績を残すこと。そして何より日々、挑戦する気持ちを忘れないこと。

 矢板中央を指導し始めて苦節26年。選手権常連校に数えられるようになった今、新たな歴史をかけた大一番が間近に迫っている。

文●小室功
 

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