歴史を参考にするなら、ラストスパートに一日の長があるのは鹿島だ。ただし今は勝負強さを発揮していても、おそらく内情を覗けば、張りつめたまま酷暑を乗り切り、故障と紙一重の疲労が蓄積している。まだ3冠の可能性を残しており、ジーコTD(テクニカルディレクター)は必ず全タイトルを全力で獲りに行くように叱咤する。
その点、FC東京と横浜はリーグに専念出来るメリットがあり、前者はクラブの経験値は浅いが勝ち慣れた指揮官を擁し、後者は未知の爆発力を秘めている。三つ巴の最後の直線は、鹿島の心身のコンディション調整が最大の焦点で、少しでも綻びが出ればFC東京が走り、横浜がまくり切れば新しい風が吹く。
一方、J2は36節終了時点で大本命の柏が勝点5差で首位に立ち、よほどのアクシデントがない限りJ1復帰は固い。反面、2位・横浜FCから4位・大宮まではひと塊で、さらに5位・水戸から9位・岡山まで勝点3差なので、ここまではプレーオフ圏内と考えていい。だが自動昇格は2チームに縮小されているため、プレーオフからJ1・16位との決定戦まで勝ち続けての昇格は奇跡に近い。事実上の昇格枠は「2」席だと考えておくべきだろう。
昇降格のチャンスが減れば、当然カテゴリー間の壁は厚くなる。だからこそ本来昇格の先には「定着」のための未来設計図が不可欠だ。今年の柏を例に採れば、確かにJ2ならオルンガやクリスティアーノの個の力でゴールをこじ開けられるし、守備ではベテランの経験がモノを言う。しかし反面J1の舞台を想定すれば、30歳代の選手が軸を成すCBなど見直しが必要なポジションが目立つし、なにより来年以降の伸びしろを探すのが難しい。
逆に4位につける大宮は、高木琢也監督がアカデミー育ちの奥抜侃志や吉永昇偉らを抜擢しながら戦って来たし、今年大躍進の水戸も比較的若い日本人選手を中心に経験を共有している。Jも四半世紀の歴史を刻み、徐々にクラブ間格差は広がりつつある。それを覆すには、育成を原点とする壮大なシナリオが要る。
文●加部究(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』10月24日号から転載
その点、FC東京と横浜はリーグに専念出来るメリットがあり、前者はクラブの経験値は浅いが勝ち慣れた指揮官を擁し、後者は未知の爆発力を秘めている。三つ巴の最後の直線は、鹿島の心身のコンディション調整が最大の焦点で、少しでも綻びが出ればFC東京が走り、横浜がまくり切れば新しい風が吹く。
一方、J2は36節終了時点で大本命の柏が勝点5差で首位に立ち、よほどのアクシデントがない限りJ1復帰は固い。反面、2位・横浜FCから4位・大宮まではひと塊で、さらに5位・水戸から9位・岡山まで勝点3差なので、ここまではプレーオフ圏内と考えていい。だが自動昇格は2チームに縮小されているため、プレーオフからJ1・16位との決定戦まで勝ち続けての昇格は奇跡に近い。事実上の昇格枠は「2」席だと考えておくべきだろう。
昇降格のチャンスが減れば、当然カテゴリー間の壁は厚くなる。だからこそ本来昇格の先には「定着」のための未来設計図が不可欠だ。今年の柏を例に採れば、確かにJ2ならオルンガやクリスティアーノの個の力でゴールをこじ開けられるし、守備ではベテランの経験がモノを言う。しかし反面J1の舞台を想定すれば、30歳代の選手が軸を成すCBなど見直しが必要なポジションが目立つし、なにより来年以降の伸びしろを探すのが難しい。
逆に4位につける大宮は、高木琢也監督がアカデミー育ちの奥抜侃志や吉永昇偉らを抜擢しながら戦って来たし、今年大躍進の水戸も比較的若い日本人選手を中心に経験を共有している。Jも四半世紀の歴史を刻み、徐々にクラブ間格差は広がりつつある。それを覆すには、育成を原点とする壮大なシナリオが要る。
文●加部究(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』10月24日号から転載