現地７月30日、カナダのモントリオールで行われた女子テニスの「ナショナルバンク・オープン」２回戦で、元世界５位のユージェニー・ブシャール（カナダ）は、ベリンダ・ベンチッチ（スイス／同20位）に2-6、6-3、4-6で敗れ、現役最後の試合を終えた。

　ワイルドカード（主催者推薦）で出場した31歳は、１回戦でエミリアナ・アランゴ（コロンビア／同82位）にフルセットで勝利。これが2023年９月の「グアダラハラ・オープン」以来のツアー本戦白星だった。そして迎えたベンチッチとの２回戦。第１セットはブレークを２度許して落としたが、第２セットではリターンで揺さぶり、地元ファンの声援を背に奮起。ファイナルセットも一時は3-1とリードした。

　だが、最後は力尽きた。第６ゲームでブレークを返されると、そのまま４ゲーム中３ゲームを落とし敗戦。全盛期を知るファンの誰もが胸を打たれたラストマッチだった。

　彼女が最も輝いていたのは2014年だ。四大大会で初めてシードが付いた全豪でベスト４入りすると、５月のニュルンベルクでWTAツアー初優勝を飾った。さらに全仏でも準決勝に進出し、ウインブルドンでは準優勝。同年10月には、20歳にして世界ランキング５位を記録した。若くして世界のトップに駆け上がった実力と、華のある存在感を兼ね備え、テニス界の内外で広く注目を集めた。
  　2015年の全米オープン期間中に起きた頭部強打の転倒事故を境に、かつての鋭さは徐々に失われてしまったが、2023年までコンスタントにツアー参戦。同年のビリー・ジーン・キング・カップでカナダの初優勝にも貢献した。

　試合後のオンコートインタビューでは、家族への感謝を口にしながら涙を流した。

「テニスは私に本当にたくさんのものを与えてくれました。このスポーツと、これまで出会った全ての人々に心から感謝しています。お母さん、お父さん、妹たち、弟へ。あなたたちの犠牲とサポートがなければ、私は今日ここに立っていません。この観客が私に声援を送ってくれる時、それはあなたたちにも向けられたものです。あなたたちがいなければ、私はここにいなかった」

　キャリアの始まりの地、モントリオールで終幕を迎えたブシャールは、今後ピックルボールのプレーヤーやテニス解説者としての活動を予定しているという。セカンドキャリアのコートでも、彼女らしい輝きが待っているだろう。

構成●スマッシュ編集部

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