間もなく開幕する男子テニスツアーのマスターズ1000シリーズ「シンシナティ・オープン（８月７日～18日／アメリカ・シンシナティ／ハードコート）にディフェンディングチャンピオンとして出場する世界ランキング１位のヤニック・シナー（イタリア）が現地６日にメディアの取材に応じ、懸念されている右ヒジの状態について語った。

　今年１月の全豪オープンで連覇を果たし、７月のウインブルドンで四大大会４勝目を挙げるなど凄まじい活躍を続けているシナー。そんな彼のちょっとした“異変”が話題を呼んでいる。

　ATP（男子プロテニス協会）公式サイトによると、ウインブルドン以来の実戦かつ今夏の北米ハードコートシリーズ初戦となるシンシナティでの大会前練習で、シナーは右ヒジを覆うサポーターを装着してヒッティングを行なった。

　シナーはウインブルドン準々決勝でグリゴール・ディミトロフ（ブルガリア／現20位）と対戦した際に転倒して同箇所を痛めた後から、右ヒジのサポーターを着用。それでもケガの影響を感じさせないプレーを見せ、準決勝では四大大会24勝を誇る元世界１位のノバク・ジョコビッチ（セルビア／現６位）を、決勝ではライバルのカルロス・アルカラス（スペイン／２位）を破って頂点に立った。

　そのシナーは出場予定だった現在開催中の「ナショナルバンク・オープン」（カナダ・トロント／ハード／ATP1000）を欠場。しばしの休養中に右ヒジのケガは回復するだろうというのが大方の見方だったが、まだサポーターをしているとなると、依然問題があるのかと心配になる。
  　しかしシナーいわく、「ヒジの状態は良い」とのこと。サポーターを付けているのにはれっきとした理由があるとし、こう続けた。

「装着した時の感覚が好きなんだ。ボールにしっかり力が伝わる感じがするし、安定感も出る。僕自身の感覚に過ぎないけど、ウインブルドンではその感触が非常にいいと感じた。暑くて湿度の高い状況下だとどうなるかはわからないから、それは今後の課題だけど、とにかくボールを打った時の感覚がすごく好きなんだ」

　シナーは６月の全仏オープン決勝でアルカラスに大逆転負けを喫したが、ウインブルドンで雪辱を果たした。５連敗中だった宿命のライバルにようやく勝利してから３週間以上が過ぎた今、23歳の若き王者は改めて聖地での初戴冠をこう振り返る。

「ウインブルドンは、直前の全仏オープンで何が起こり、それをどう乗り越えたかを考えると、自分にとっては全く別の大会に臨んだような感覚だった。再びハイレベルなプレーができたことには、自分でもちょっと驚いたくらいだった」

　一方で四大大会に次ぐグレードを誇るマスターズ1000では決勝でジョコビッチを破った昨年９月の上海オープン以来優勝がないシナー。タイトル防衛が懸かる今大会には第１シードで参戦し、初戦となる２回戦（シード勢は１回戦免除）ではビット・コプリバ（チェコ／80位）と予選勝者のどちらかと対戦する。

文●中村光佑

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