フォア、バック共に両手打ちから繰り出す桁外れの強打を武器に10代で世界ランキング1位に上り詰めた実績を持つ女子テニス界のレジェンド、モニカ・セレス氏(アメリカ/51歳)が『AP通信』のインタビューに応じ、3年前から神経筋の自己免疫疾患「重症筋無力症」を患っていることを告白した。
重症筋無力症とは、自己免疫反応の異常によって神経と筋肉の信号伝達が阻害され、随意筋(自分の意思で動かせる筋肉)の脱力症状を引き起こす原因不明の慢性疾患。まぶたの下がりや複視(物が二重に見えること)、腕や脚に力が入らなくなるといった症状が現れ、活動中に筋力が弱まり、休むと回復するという特徴がある。米国立神経疾患・脳卒中研究所によれば、重症筋無力症は40歳未満の若い女性や60歳以上の高齢男性に発症するケースが多いものの、「子どもを含めあらゆる年齢の人に起こり得る」とのことだ。
16歳で出場した1990年の全仏オープンで四大大会初優勝を飾り、翌91年に世界1位を記録するも、絶頂期だった93年、試合中に暴漢から背中を刺されるという信じがたい災厄に見舞われ、波乱万丈のテニスキャリアを築いたセレス氏。彼女の病気が判明したのは家族でテニスをしていた時に複視の症状に気付いたことがきっかけだったという。
「子どもや家族と打ち合っていた時に、ボールを打ち損ねることがあった。そこで『あれ? ボールが2つに見える』って気付いた。さすがにその症状を無視することはできなかった」
次第に「髪を乾かすことも難しく」なり、「脚の筋力も低下していった」セレス氏は医師から紹介を受けた神経科を受診。重症筋無力症という病気を「全く知らなかった」ため、「診断を受けた時は『えっ、何それ!?』みたいな感じだった」と振り返る。
診断を受け入れ、人にオープンに話せるようになるまでにもかなりの時間を要したが、今月24日の「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/ハードコート/四大大会)の開幕を前に、重症筋無力症の認知を高めたいという思いから病気を公表する決断に至ったと明かした。
重症筋無力症は完治が難しい病気ではあるが、同研究所は「一時的または永続的に寛解し、筋力低下の症状が完全に消えるケースもある」と伝えている。病気との闘いは本当に大変だろうが、幾多の苦難を乗り越えてきたセレス氏が、これからも明るく前を向いて日々を過ごせることを願いたい。そして今回の彼女の勇気あるカミングアウトが、少しでも同じ病に苦しむ人たちの励みとなることを期待したい。
文●中村光佑
【連続写真】セレス、ボルグ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
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重症筋無力症とは、自己免疫反応の異常によって神経と筋肉の信号伝達が阻害され、随意筋(自分の意思で動かせる筋肉)の脱力症状を引き起こす原因不明の慢性疾患。まぶたの下がりや複視(物が二重に見えること)、腕や脚に力が入らなくなるといった症状が現れ、活動中に筋力が弱まり、休むと回復するという特徴がある。米国立神経疾患・脳卒中研究所によれば、重症筋無力症は40歳未満の若い女性や60歳以上の高齢男性に発症するケースが多いものの、「子どもを含めあらゆる年齢の人に起こり得る」とのことだ。
16歳で出場した1990年の全仏オープンで四大大会初優勝を飾り、翌91年に世界1位を記録するも、絶頂期だった93年、試合中に暴漢から背中を刺されるという信じがたい災厄に見舞われ、波乱万丈のテニスキャリアを築いたセレス氏。彼女の病気が判明したのは家族でテニスをしていた時に複視の症状に気付いたことがきっかけだったという。
「子どもや家族と打ち合っていた時に、ボールを打ち損ねることがあった。そこで『あれ? ボールが2つに見える』って気付いた。さすがにその症状を無視することはできなかった」
次第に「髪を乾かすことも難しく」なり、「脚の筋力も低下していった」セレス氏は医師から紹介を受けた神経科を受診。重症筋無力症という病気を「全く知らなかった」ため、「診断を受けた時は『えっ、何それ!?』みたいな感じだった」と振り返る。
診断を受け入れ、人にオープンに話せるようになるまでにもかなりの時間を要したが、今月24日の「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/ハードコート/四大大会)の開幕を前に、重症筋無力症の認知を高めたいという思いから病気を公表する決断に至ったと明かした。
重症筋無力症は完治が難しい病気ではあるが、同研究所は「一時的または永続的に寛解し、筋力低下の症状が完全に消えるケースもある」と伝えている。病気との闘いは本当に大変だろうが、幾多の苦難を乗り越えてきたセレス氏が、これからも明るく前を向いて日々を過ごせることを願いたい。そして今回の彼女の勇気あるカミングアウトが、少しでも同じ病に苦しむ人たちの励みとなることを期待したい。
文●中村光佑
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