男子テニスツアーを統括するATP(男子プロテニス協会)は、プロテニスを新たな高みに導くことを目標とする「One Visionプロジェクト」の一環で、2023年シーズンから一部マスターズ1000大会の開催期間およびドロー数を従来の8日間・56ドローから12日間・96ドローに拡大している。先日行なわれた「ナショナルバンク・オープン」(カナダ・トロント)と「シンシナティ・オープン」(アメリカ・シンシナティ)の北米マスターズ2大会でも今年から新フォーマットが導入された。
現状四大大会に次ぐグレードのマスターズ1000で従来のフォーマットを維持しているのは、「モンテカルロ・オープン」(モナコ/クレー)と「パリ・マスターズ」(フランス/ハード)の2大会のみ。現役選手からは「2週間開催は過酷すぎる」との批判が噴出しており、ファンの間でも拡張フォーマットを支持する声は非常に少ない印象だ。
ただ改革の成果は明確に表れている。ATPのアンドレア・ガウデンツィ会長(イタリア/52歳)によれば、改革からわずか2年ほどで1,830万ドル(約26億9,400万円)もの莫大な利益がもたらされ、「数百億円規模のインフラ投資や選手への直接的な利益還元にもつながった」と同協会の公式サイトで手応えを語っている。
「利益分配がしっかり行なわれているという事実そのものが、テニス界全体が健全に成長している証だ。それは選手の力だけでなく、大会自体が確固たる収益を上げていることの強い指標でもある。戦略計画のわずか2年目で、1,830万ドルは大きな数字だ。わかりやすく言えば、マスターズ1000全体で基本賞金額が25%増加したのと同等の利益になる。これは従来のフォーマットでは到底実現できなかった数字であり、今では選手たちが主要大会の財政状況を完全に透明な形で把握できるようになっている」
「拡張フォーマットにより大会での滞在日数は増える。これは確かに大きな要素だが、同時にツアー全体を引き上げるために必要な収益力を解放することにもつながる。5~10年後を見据えれば、マスターズ1000はあらゆる面で飛躍的に成長しており、後にこの拡張フォーマットがその基盤になったと振り返ることになると確信している」
近年“ツアースケジュールの過密化”に批判が集中していることについては「いつ全力を出し、いつ休むかを見極める責任」こそ伴うものの、選手たちには「自分で出場する大会を選ぶ権利がある」と主張し、「全選手に配慮したスケジュールを作ることはできない」と明言。
上位選手に課されるモンテカルロを除くマスターズ8大会の出場義務についても「過剰だとは思わない」と述べ、「それらの大会こそがシーズンの主軸になり、現在の記録的な賞金額や利益分配を可能にしている」との考えを示した。一方で「オフシーズンを伸ばす計画」も並行して進めており、「積極的な議論が交わされている」と現況を報告している。
ガウデンツィ会長はこれまでもマスターズ1000の拡張戦略の利点を強調してきたが、そのスタンスは今回も揺るがなかった。今後の男子ツアーはどうなっていくのか、関心は高まるばかりだ。
文●中村光佑
【動画】シナーの途中棄権でアルカラスが優勝。直近のマスターズ1000「シンシナティOP」決勝ハイライト
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ただ改革の成果は明確に表れている。ATPのアンドレア・ガウデンツィ会長(イタリア/52歳)によれば、改革からわずか2年ほどで1,830万ドル(約26億9,400万円)もの莫大な利益がもたらされ、「数百億円規模のインフラ投資や選手への直接的な利益還元にもつながった」と同協会の公式サイトで手応えを語っている。
「利益分配がしっかり行なわれているという事実そのものが、テニス界全体が健全に成長している証だ。それは選手の力だけでなく、大会自体が確固たる収益を上げていることの強い指標でもある。戦略計画のわずか2年目で、1,830万ドルは大きな数字だ。わかりやすく言えば、マスターズ1000全体で基本賞金額が25%増加したのと同等の利益になる。これは従来のフォーマットでは到底実現できなかった数字であり、今では選手たちが主要大会の財政状況を完全に透明な形で把握できるようになっている」
「拡張フォーマットにより大会での滞在日数は増える。これは確かに大きな要素だが、同時にツアー全体を引き上げるために必要な収益力を解放することにもつながる。5~10年後を見据えれば、マスターズ1000はあらゆる面で飛躍的に成長しており、後にこの拡張フォーマットがその基盤になったと振り返ることになると確信している」
近年“ツアースケジュールの過密化”に批判が集中していることについては「いつ全力を出し、いつ休むかを見極める責任」こそ伴うものの、選手たちには「自分で出場する大会を選ぶ権利がある」と主張し、「全選手に配慮したスケジュールを作ることはできない」と明言。
上位選手に課されるモンテカルロを除くマスターズ8大会の出場義務についても「過剰だとは思わない」と述べ、「それらの大会こそがシーズンの主軸になり、現在の記録的な賞金額や利益分配を可能にしている」との考えを示した。一方で「オフシーズンを伸ばす計画」も並行して進めており、「積極的な議論が交わされている」と現況を報告している。
ガウデンツィ会長はこれまでもマスターズ1000の拡張戦略の利点を強調してきたが、そのスタンスは今回も揺るがなかった。今後の男子ツアーはどうなっていくのか、関心は高まるばかりだ。
文●中村光佑
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