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海外テニス

シナーがドーピングによる出場停止処分の苦悩を告白「常に頭を離れず、とても苦しかった」<SMASH>

中村光佑

2025.08.28

ドーピングの陽性が判明した直後は「人から以前とは違う目で見られるのではないか」と恐怖を抱いていたというシナー。(C)Getty Images

ドーピングの陽性が判明した直後は「人から以前とは違う目で見られるのではないか」と恐怖を抱いていたというシナー。(C)Getty Images

 男子テニス世界ランキング1位のヤニック・シナー(イタリア)が、8月27日に世界的高級時計ブランド「ロレックス」が公開したドキュメンタリー映像に登場。その中で自身のドーピング問題で経験した精神的苦悩を赤裸々に告白した。

 既報の通り24歳のシナーは昨年3月のドーピング検査で、禁止薬物「クロステボル」が2度にわたり検出。サポートメンバーの1人が自身の傷を治療するためにクロステボル入りのスプレーを肌に塗り、その手でシナーにマッサージ等を施したことが原因だとされている。

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」は、「不正の意図はなかった」としてシナーをいったんは無罪としたが、世界反ドーピング機関(WADA)がこの判決を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴。当初最終審理は今年4月に実施される予定だったが、一足早く2月にWADAとシナー側との合意が成立し、結果的に同選手は3カ月の出場停止処分を経て5月にツアーに復帰した。

 出場停止期間中に収録された同ドキュメンタリーでは、シナーが大会に出られなかった間に何をしていたのか、さらには精神的にどれほど苦しんでいたのかが明かされている。試合中は常に冷静沈着な彼も、この時ばかりは少々感情的な様子を見せた。シナーは優勝した昨夏の「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/ハードコート/四大大会)の開幕直前に自身のドーピング違反が判明したことに触れつつ、こう語っている。

「昨年ニューヨークに来た時は自分にたくさんの疑いがかけられること、そして“人から以前とは違う目で見られるのではないか”という恐怖を抱えていた。陽性が判明したのは全米開幕の5日前で、本当に難しい状況だった」
 
 その上で「昨年は幸せな気持ちではなかった。ドーピングの件が常に頭を離れず、とても苦しかった」と告白。それでも出場停止を余儀なくされた3カ月間で「家族や友人と過ごす時間を持てた」ことによりメンタルが回復し、「コートの外で幸せなら、コートでもっと良いプレーができる」ことを学んだと明かした。またその中で「何事も当たり前ではない」という教訓も得られたとシナーは振り返る。

「試合に勝つために全力で準備しても、コートに出ると迷いが出たり、難しい局面に直面したりすることもある。最高峰の四大大会で何度も優勝を経験した今でも、決してそれが当たり前だとは思っていないし、物事はすぐに変化する可能性がある。だからこそ、自分の身体と心をよく知ることが大切で、それがコート内外で正しい判断を下す鍵になると考えている」

 シナーは現在開催中の全米オープン(8月24日~9月7日)にディフェンディングチャンピオンとして出場しており、26日の1回戦ではビット・コプリバ(チェコ/89位)に6-1、6-1、6-2で快勝してタイトル防衛へ好スタート。現地28日に予定されている2回戦ではアレクセイ・ポピリン(オーストラリア/同36位)と対戦する。

文●中村光佑

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