海外テニス

元世界1位ヒューイットが“ドーピング検査官突き飛ばし”で2週間資格停止&3万豪ドルの罰金処分<SMASH>

中村光佑

2025.09.11

元世界1位で現在豪代表の主将を務めるヒューイット氏が、昨年のデ杯準決勝後に検査官とトラブルを起こして起訴されていた。その後正当防衛を主張したが、独立機関の調査で認められなかったことが明らかになった。(C)Getty Images

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」は9月10日に公式声明を発表し、男子テニス国別対抗戦「デビスカップ」でオーストラリア代表の主将を務める元世界ランキング1位のレイトン・ヒューイット氏(オーストラリア)に対し、「ドーピング検査官への攻撃的行為」により2週間の資格停止処分と3万豪ドル(約292万円)の罰金を科したと報告した。

 報告によると、現役時代に2度の四大大会シングルス優勝を経験した44歳のヒューイット氏は、2024年11月23日に行なわれたイタリアとのデビスカップ・ファイナルズ準決勝での敗戦後に、60歳のドーピング検査官を「突き飛ばした」とされている。事件は混雑した会場の通路でヒューイット氏と同検査官が偶然接触したことがきっかけで発生したとのことだ。

『UBITENNIS』など一部海外メディアの報道によると、ヒューイット氏側は情状酌量を求めて提出した文書を通じ、次のように弁明したという。

「ヒューイット氏は25年にわたる輝かしいキャリアを通じて、常に模範的なプロ意識とテニス界への献身的な姿勢を示してきました。本人も今回の出来事について心から反省しており、ドーピング担当官への敵意は抱いていません。当時のヒューイット氏は体調不良からの回復期にあり、慢性的な痛みによる身体の反応が今回の事件につながってしまいました」
 
 起訴は25年1月6日に行なわれ、その後の審理および7月の追加オンライン審問で証人聴取を実施。そこでもヒューイット氏は「あくまでも正当防衛だった」と主張したが、独立機関による綿密な調査の結果、「正当防衛の要件は満たしておらず、合理的かつふさわしい行為ではなかった」と結論づけられた。今回ヒューイット氏に課された資格停止処分について、審理を担当した議長は「過度に懲罰的にならないよう、スケジュールを考慮して処分開始日を決定した」と説明している。

 ITIAのカレン・ムーアハウスCEO(最高経営責任者)は今回の一件について声明で次のように述べている。「ドーピング検査官は、テニスの公正性を裏で支える重要な役割を担っています。彼らは身体的接触を恐れずに職務を遂行しなければなりません。今回のヒューイット氏の行為は明らかに一線を越えており、処分を下す以外に選択肢はありませんでした」

 今週末に行なわれる「デビスカップ・ファイナル予選2回戦」(9月12日~13日)でオーストラリアはベルギーとの対戦を予定しており、今のところはヒューイット氏もこの試合には帯同できることになっているが、25年9月24日から10月7日までは処分によりITF(国際テニス連盟)主催大会への立ち入りが禁止される。なお現時点でヒューイット氏は今回の処分についてまだ公にコメントを出していない。

文●中村光佑

【動画】元世界1位ヒューイットのスーパープレーを一挙公開!

【関連記事】「なにもないところからすべてが始まった」元世界1位のヒューイットが1年越しの国際テニス殿堂入り式典に出席<SMASH>

【関連記事】シナーがドーピングによる出場停止処分の苦悩を告白「常に頭を離れず、とても苦しかった」<SMASH>
NEXT
PAGE
【動画】元世界1位ヒューイットのスーパープレーを一挙公開!