９月10日にテニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」から「ドーピング検査官への攻撃的行為」による２週間の資格停止処分と３万豪ドル（約290万円）の罰金を科された男子テニス元世界ランキング１位のレイトン・ヒューイット氏（オーストラリア）が、今回の処分に対する異議申し立ての手続きを進めていることを明かした。

　既報の通り現役時代に２度の四大大会シングルス優勝を経験し、現在は男子国別対抗戦「デビスカップ」でオーストラリア代表の主将を務める44歳のヒューイット氏は、2024年11月23日に行なわれたイタリアとのデビスカップ・ファイナルズ準決勝での敗戦後に、混雑した会場の通路で偶然接触した60歳のドーピング検査官を「突き飛ばした」とされている。

　事件の起訴は25年１月６日に行なわれ、その後の審理および７月の追加オンライン審問で証人聴取を実施。そこでヒューイット氏側は「行為は正当防衛で、当時は体調不良からの回復期にあり、慢性的な痛みによる身体の反応が今回の事件につながった」と弁明したが、独立機関による綿密な調査の結果、「正当防衛の要件は満たしていなかった」と結論づけられた。裁定について審理を担当した議長は「過度に懲罰的にならないよう、スケジュールを考慮して処分開始日を決定した」と説明している。

『オーストラリア通信（AAP）』によると、ヒューイット氏は現地９月13日～14日の日程で約３年半ぶりに自国で行なわれる「デビスカップ・ファイナル予選２回戦」のオーストラリア対ベルギー戦を前に、自身の処分について沈黙を破った。ちなみに処分は「９月24日から10月７日まで」と定められており、今回のデ杯では問題なくチームの指揮を執ることができる。

「私は今回の決定に非常に失望していますし、審理の過程や、全ての事実が公表されていないことにも失望しています。現在は弁護士とともに控訴の手続きを進めているところです」
  　一連の騒動が「試合に支障をきたすことはない」と強調するヒューイット氏だが、代表戦に大きな影響を与えかねない処分決定のタイミングには強い不快感を示す。その上でチームのエースであるアレックス・デミノー（８位）に触れつつ、試合への意気込みをこう口にした。

「ITIAやITF（国際テニス連盟）とは異なり、私自身は今回の騒動が試合の妨げになるようなことは避けたいと思っています。それはこの大会が我々にとって本当に大切なものだからです。３年半ぶりにホームグラウンドで試合ができる上に、多くの子どもたちが自分たちのロールモデルとなるような選手、特にアレックスを間近で見られるのは素晴らしいことです。今週末の試合や我々の取り組みから得られるポジティブで素晴らしい要素は数え切れないほどあります。この経験がチームの若手選手たちをさらに強くし、任務を遂行するための力になると信じています」

　控訴がどうなるかは気になるところだが、ひとまず今はヒューイット氏の指揮の下でオーストラリアチームが奮闘する姿に注目したい。

文●中村光佑

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