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海外テニス

なぜケガを抱えコートに立つのか? 完勝のアルカラスが示した「レジェンドたちと同じテーブルに付く」覚悟<SMASH>

内田暁

2025.09.28

ややぎこちなさはあったが、豪快なフォアを軸にジャパンオープン2回戦を勝利したアルカラス。「足首の不安を除けば、完璧に近い内容」と自賛した。写真=滝川敏之

ややぎこちなさはあったが、豪快なフォアを軸にジャパンオープン2回戦を勝利したアルカラス。「足首の不安を除けば、完璧に近い内容」と自賛した。写真=滝川敏之

「あなたは、自分が“史上最高のテニス選手”になる可能性を、考えたことはあるか?」

 22歳にして6度目のグランドスラム優勝を果たし、世界1位に返り咲き迎えた、ジャパンオープンテニスの開幕前会見。やや唐突に向けられたその問いに、カルロス・アルカラスは目をぱちくりさせながら、こう答えた。

「そんなことは、ほぼ考えたことがない。僕のテニスキャリアの目標は、レジェンドと呼ばれる人たちと肩を並べるべく、努力を重ねることだから」

 それから4日後の、土曜日の黄昏時。“史上最高候補者”の登場を待ち焦がれて興奮し、同時に不安をも募らせた1万人の観衆が待つコートに、彼は悠然と現れた。

 アルカラスが、2日前の1回戦中に左足首を痛めたことは、ここにいるファンの多くが知っていただろう。欠場するのでは......との懸念を抱いていた人たちも、少なくなかったはずだ。

 そんな観衆の心配を吹き飛ばすかのように、彼は笑顔でファンに手を振り、ジゾー・ベルグスが待つコートに歩みを進めていく。試合開始前のコイントスの際には、ヒザを胸につけるほどに高く跳ねる、いつものルーティンも履行。ソックスの下からのぞくテーピングが、2日前のアクシデントの痕跡として、人々の目にわずかに触れる程度だった。
 
「もちろん、不安はあった」と、試合後にアルカラスは打ち明ける。それでも試合前のウォームアップを終え、痛みがないと感じた時、自らにゴーサインを出した。

 アルカラスのサービスで始まった試合は、いきなりのダブルフォールトで幕を開ける。客席から漏れたため息は、セカンドサービスのミスにだけ向けられたものではなかっただろう。

 だが直後、アルカラスはエースを叩き込む。そこからは順当にポイントを重ねて、まずは最初のゲームをキープした。3ゲーム目はブレークされるも、直後のゲームでブレークバック。唸り声と共に叩き込むフォアの強打は、そのインパクト音だけで歓声を誘った。柔らかなドロップショットは、固唾を飲み見守る人々の視線を集め、ゆっくりネットを越えライン際に沈む。

 ただ、それらスーパーショットが飛び出す一方で、サービスキープには苦しんだ。互いに2つのブレークを奪って迎えた、第10ゲーム。ベルグスの2つのダブルフォールトにも助けられ、世界1位がブレークと共に第1セットを奪取した。
 
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