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海外テニス

「久しぶりに、こんなに硬くなった」――1セットダウンから本領発揮。慶應CHで錦織圭が刻んだ“復帰の第一歩”<SMASH>

内田暁

2025.11.19

慶應チャレンジャーで約3カ月ぶりに実戦復帰した錦織。初戦は市川に第1セットを落とすも、徐々に本領を発揮し逆転勝利を挙げた。写真=永島裕基

慶應チャレンジャーで約3カ月ぶりに実戦復帰した錦織。初戦は市川に第1セットを落とすも、徐々に本領を発揮し逆転勝利を挙げた。写真=永島裕基

 それはどこか、不思議な光景ではあった――。
 
 慶應義塾大学・日吉キャンパスには校門がなく、小高い丘の斜面に広がるキャンパスは、開放感に溢れている。

 伝統のテニスコートは、その丘を越え、急こう配の階段を下りた低地にあった。誰が呼んだか、“蝮(マムシ)谷テニスコート”。かつては水田や沢のある湿地帯で、多くのマムシが生息していたことが、その名の由来だという。

 その蝮谷テニスコートのスタンドは、チケットを購入できた幸運な観客たちで埋まっていた。コート後方の丘の上にはテレビ中継カメラが設置され、コートサイドにもフォトグラファーたちのレンズが並ぶ。

 そのコートに、元世界ランキング4位の錦織圭が、階段を降り姿を現した。足首まで覆う黒いレギンスは、寒さ対策のためだろう。観客たちは熱狂するというよりも、固唾を飲んで、一挙手一投足に目を凝らしていた。

 錦織の公式戦出場は、今年8月の「シンシナティ・オープン」(ATP1000)以来。日本での試合は、昨年10月の「ジャパンオープン」(ATP500)以来。そして日本でのATPチャレンジャー出場となると、2006年3月の「島津全日本室内テニス選手権大会」まで遡る。11月17日開幕の「横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント」が、錦織の復帰戦の舞台となった。
 
 第1シードとしてコートに立った錦織が、初戦で当たったのは市川泰誠。現在のランキングは793位で、今大会では予選を突破し錦織への挑戦権を手にしていた。

 24歳の市川と錦織の足跡が、最も接近したのは、2018年の全米オープンだったろう。その大会で錦織はベスト4入りし、市川はジュニア部門でベスト8に進出していた。会場で短いながらも言葉を交わし、世界最大のテニス専用アリーナで準決勝を生観戦した市川にとって、当時の錦織は「すごく遠い存在」

 その錦織との初対戦を「ものすごく楽しみにしていた」という市川は、喜びを全身からほとばしらせるように、コートを駆けた。コイントスに勝ちリターンを選ぶと、立ち上がりから錦織のセカンドサービスを果敢に叩く。寒さのためか緊張のためか、硬さの見える錦織を左右に振ってミスを誘い、いきなりのブレークに成功。その後は自分のサービスゲームで、錦織にチャンスを与えない。「第1セットは、ほぼ記憶にない」というほどに集中した市川が、第1セットを6-4で先取した。
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