海外テニス

「空席の向こうの声援を感じ…」剣が峰の日本チームは2日目の巻き返しを誓う【男子テニス/デビスカップ予選】

内田暁

2020.03.07

日本代表メンバー、左から岩渕聡監督、錦織圭、内山靖崇、添田豪、綿貫陽介、マクラクラン勉。(C)GettyImages

 9割ほどが空席のセンターコートに、大の字になった勝者の咆哮と、飛びつくチームメイトの歓喜の雄叫びが響き渡った。

 内山靖崇とロベルト・キロスの一戦は、互いにマッチポイントを凌ぎあった死闘の末に、タイブレークでキロスが勝利をもぎ取る。一進一退の攻防のラストポイントは、長い左腕をいっぱいに伸ばし鋭角にねじ込んだ、エクアドルの2番手の会心のパッシングショットだった。

 11月にマドリードで開催されるデビスカップ・ファイナルの出場権を賭けた日本対エクアドルは、いささか異様な雰囲気の中で行なわれた。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、スタンドにサポーターの姿はなし。ボールパーソンたちは使い捨てのゴム手袋を着用し、選手が試合中に使用するタオルは、籠を用いて受け渡しされた。

 それでも、客席に人の姿が全くないわけではない。日本選手の家族や関係者が声援を送り、エクアドルチームも、協会会長の家族を含む10名ほどの関係者が、手を叩き大声で選手を熱く鼓舞する。

 両国の選手たちも、「しっかり結果を残すのが、見に来る予定だった方たちへのお返しになる」(内山)、「我々はとても絆の強いチーム。互いにサポートし、良いプレーと良い結果が出せると思う」(ゴンサロ・エスコバル)と、国の代表としての矜持を誇示。サポーターの声はなくとも、そこには確かに、デビスカップの魂が存在した。
 
 関係者とメディアが見守る開会式を終えた後、第1試合は、添田豪とエミリオ・ゴメスの対戦で幕を開ける。添田にしてみれば会場のビーンズドームは、過去のデ杯やATPチャレンジャーなどで、幾度も戦っている慣れたコート。ただゴメスにしてみても「最も好きなタイプのサーフェス」と、ホーム感を覚える環境だったという。

 南米のエクアドルにはクレーのイメージがあるかもしれないが、元全仏オープン優勝者を父に持つこのゴメスを筆頭に、エクアドルチームのメンバーは、ほぼ全員がアメリカの大学テニス経験者。カレッジシーズンの大半をインドアハードコートで戦ってきた彼らにとって、ビーンズドームは「とても心地よくプレーできる」コートだった。

 来日直前にも、2週連続でインドアハードでプレーしてきたゴメスのスタートダッシュに、添田はいささか驚いただろうか。最初のゲームをブレークされると、以降も早いタイミングでボールをフラットで強打してくるゴメスの前に、劣勢に押しやられる場面が目立つ。第2セットは、ブレークされる度に奪い返し追いすがるも、最後はタイブレークの末に突き放された。