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海外テニス

「コーチが席から助言を与えることを許す」。テニスの競技性を変えかねないWTAの新ルール。選手やコーチの考えは?

内田暁

2020.03.17

2018年全米オープン決勝で、コーチングを受けたとされペナルティを与えられ激怒するセレナ(右)。(C)GettyImages

2018年全米オープン決勝で、コーチングを受けたとされペナルティを与えられ激怒するセレナ(右)。(C)GettyImages

 ATPとITFが、揃って4月20日週までの国際大会の開催を見送り、WTAは4月27日開幕予定のプラハ大会までの、中止を正式に決定した。新型コロナウイルスの影響で、今季のツアー大会は数えるほどしか行なわれていない。そのために、WTAツアーで新たなルールがテスト施行されていたことを、知る人はかなり少ないのではないだろうか。

 コーチが、ボックス(コーチ用席)から選手に指示や助言を与えることを許す――。それが、新たなルールである。

「選手は、試合中にコーチの指示を受けてはならない」というテニスのルールが広く世に知れ渡ったのは、2018年全米オープン女子決勝、セレナ・ウィリアムズ対大坂なおみ戦だろう。大坂が優位に立つ第2セットの第2ゲームで、セレナは、コーチのパトリック・ムラトグルからジェスチャーによる指示を受けたとして、主審からペナルティを与えられたのだ。

 セレナはこの判定に対し、「私はコーチを見てすらいなかった!」と激怒。一方のムラトグルは、「確かにジェスチャーをした」と認めた上で、「セレナが僕の方を見ていたとは思わないし、これくらいのこと、どのコーチだって常にやっている」と居直った。かくして賛否両論、侃々諤々の論争を引き起こした“事件”から、約1年半後――。WTAは、コーチたちが大手を振って席から指示できる、新ルールのテスト運用を始めたのだった。
 
 テニスは1対1の究極の個人競技ではあるが、近年WTAはそこに、コーチという第三者の目を積極的に介入させる動きを見せている。チェンジオーバーやセット間にコーチをベンチに呼べる、“オンコートコーチング”を導入したのが2008年。2015年にはオンコートコーチング時に、タブレットを用いて指示をすることも容認していた。ただそれらの変革に比べれば、今回のルール変更は、さほど大きな変化だと選手は捕らえていないようだ。

 新ルール導入から2大会目となるカタール・オープンを制したアリーナ・サバレンカは、「正直、これまでもみんなやっていたこと」と、“暗黙”だったグレーゾーンが正式に認められただけだと明言。その上で、「コーチが試合中に言うのは、『このポイントに集中して、しっかりボールを返せ』程度のことだけれど、助けにはなる。それを晴れて堂々と出来るようになったのは良いこと」と、今回の動きを歓迎する向きだ。
 

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