有明コロシアムのブルーのコートに、青い羽織姿の大坂なおみが舞い降りる。その羽織のいたる所には、羽を広げる鶴の姿があしらわれていた。
この地で開催される「東レ パンパシフィックオープン」(WTA500)に彼女が出場するのは、4年ぶり。4年前の彼女はまだ母になる前であり、世界の48位だった。
今年、29歳の誕生日を迎えたばかりの彼女は世界の18位であり、3歳になる娘の母でもある。「久々の帰省のように感じる」というその思いを、彼女は日本を象徴する渡り鳥の意匠に込めた。
東レ パンパシフィックオープンは、日本開催の女子テニス大会では最も高いグレード。大坂の初戦の相手も、ジャスミン・パオリーニ(イタリア)というビッグネームとなった。パオリーニは現在のランキングこそ30位だが、2年前に自己最高位の4位を記録。身長163センチと小柄だが、無尽蔵のスタミナと走力を誇り、コートのどこからでも強打を放つパンチ力と意思の強さも彼女の武器。両者の過去の対戦は、昨年3月の「マイアミ・オープン」(WTA1000)の1度のみで、その時はパオリーニが逆転勝利を収めている。
その敗戦の記憶は、大坂の頭に刻み込まれていただろう。「とても危険な選手」との認識があるからこそ、立ち上がりから大坂は集中していた。自身のサービスゲームを手堅くキープすると、続くゲームを3度のデュースの末にブレーク。3ゲーム連取のスタートダッシュを見せた。
その後、第5ゲームではサービスの入りが悪くブレークを許すが、第7ゲームで危機を切り抜けキープしたことで、立て直した。続くゲームをブレークし、そのまま第1セットを奪取。まずは日本のファンに、強い大坂を印象付けた。
第2セットに入ると、後のなくなったパオリーニが、リスク覚悟で攻めに転じる。ベースラインの内側に踏み込み、跳ねるように飛ぶと高い打点からボールをコーナーへと全力で打ち込んだ。多くのゲームでブレークの危機に瀕する大坂。ただその度に彼女は、時速190キロの高速サービスや、あるいはコーナーをかすめワイドへそれていくスライスサービスでピンチを切り抜けた。
最大のターニングポイントは、ゲームカウント5-6のサービスゲームで、相手に3連続ブレークポイントを握られた場面だろう。1年半前の対戦でも、大坂は第1セットを6-3で取りながらも、逆転負けを喫していた。試合の潮目が変わりかねない局面。
ただここでの彼女は、「もしゲームを落とすにしても、ミスで相手に与えてはいけない」と自分に言い聞かせたという。「やるべきことはわかっている。自分の持ち味である強打を打つこと。そしてミスをしないこと」と、冷静に答えを導き出した。自らの思いに忠実な大坂は、フォア、そしてバックで2連続ウイナーを叩き込む。
同時に、確実に決められる機が訪れるまで、我慢強くラリーも続けた。するとミスが生じるのは、よりリスクを取るパオリーニの方。5ポイント連取でピンチを切り抜けた大坂は、タイブレークでも手綱を握り続ける。最後はワイドへのサービスウイナーで、濃密なる1時間37分の戦いに終止符を打った。
試合後のオンコート。勝者としてマイクの前に立つ大坂は、「なんか、すごくうれしい。本当に感謝してます」と、詰め掛けたファンに日本語で思いを伝えた。
「日本文化では、色々な動物が象徴的な意味を持つ。私は鶴が持つ意味合いが好き」だと彼女は言った。
鶴の含意といえば、成熟や気高さ、そして希望——。それらを胸に、大坂が日本テニスの聖地で舞う。
取材・文●内田暁
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この地で開催される「東レ パンパシフィックオープン」(WTA500)に彼女が出場するのは、4年ぶり。4年前の彼女はまだ母になる前であり、世界の48位だった。
今年、29歳の誕生日を迎えたばかりの彼女は世界の18位であり、3歳になる娘の母でもある。「久々の帰省のように感じる」というその思いを、彼女は日本を象徴する渡り鳥の意匠に込めた。
東レ パンパシフィックオープンは、日本開催の女子テニス大会では最も高いグレード。大坂の初戦の相手も、ジャスミン・パオリーニ(イタリア)というビッグネームとなった。パオリーニは現在のランキングこそ30位だが、2年前に自己最高位の4位を記録。身長163センチと小柄だが、無尽蔵のスタミナと走力を誇り、コートのどこからでも強打を放つパンチ力と意思の強さも彼女の武器。両者の過去の対戦は、昨年3月の「マイアミ・オープン」(WTA1000)の1度のみで、その時はパオリーニが逆転勝利を収めている。
その敗戦の記憶は、大坂の頭に刻み込まれていただろう。「とても危険な選手」との認識があるからこそ、立ち上がりから大坂は集中していた。自身のサービスゲームを手堅くキープすると、続くゲームを3度のデュースの末にブレーク。3ゲーム連取のスタートダッシュを見せた。
その後、第5ゲームではサービスの入りが悪くブレークを許すが、第7ゲームで危機を切り抜けキープしたことで、立て直した。続くゲームをブレークし、そのまま第1セットを奪取。まずは日本のファンに、強い大坂を印象付けた。
第2セットに入ると、後のなくなったパオリーニが、リスク覚悟で攻めに転じる。ベースラインの内側に踏み込み、跳ねるように飛ぶと高い打点からボールをコーナーへと全力で打ち込んだ。多くのゲームでブレークの危機に瀕する大坂。ただその度に彼女は、時速190キロの高速サービスや、あるいはコーナーをかすめワイドへそれていくスライスサービスでピンチを切り抜けた。
最大のターニングポイントは、ゲームカウント5-6のサービスゲームで、相手に3連続ブレークポイントを握られた場面だろう。1年半前の対戦でも、大坂は第1セットを6-3で取りながらも、逆転負けを喫していた。試合の潮目が変わりかねない局面。
ただここでの彼女は、「もしゲームを落とすにしても、ミスで相手に与えてはいけない」と自分に言い聞かせたという。「やるべきことはわかっている。自分の持ち味である強打を打つこと。そしてミスをしないこと」と、冷静に答えを導き出した。自らの思いに忠実な大坂は、フォア、そしてバックで2連続ウイナーを叩き込む。
同時に、確実に決められる機が訪れるまで、我慢強くラリーも続けた。するとミスが生じるのは、よりリスクを取るパオリーニの方。5ポイント連取でピンチを切り抜けた大坂は、タイブレークでも手綱を握り続ける。最後はワイドへのサービスウイナーで、濃密なる1時間37分の戦いに終止符を打った。
試合後のオンコート。勝者としてマイクの前に立つ大坂は、「なんか、すごくうれしい。本当に感謝してます」と、詰め掛けたファンに日本語で思いを伝えた。
「日本文化では、色々な動物が象徴的な意味を持つ。私は鶴が持つ意味合いが好き」だと彼女は言った。
鶴の含意といえば、成熟や気高さ、そして希望——。それらを胸に、大坂が日本テニスの聖地で舞う。
取材・文●内田暁
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