海外テニス

大坂なおみ、ヒザの悪化で全米2連覇ならず。試された「人間力」と、そこにある伸びしろ

内田暁

2019.09.03

前哨戦のシンシナティで痛めた左ヒザが、時間の経過とともに大坂から本来の動きを奪っていった。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

全米オープン女子シングルス4回戦/9月2日(現地時間)
大坂なおみ(JPN)5-7 4-6 B・ベンチッチ(SUI)

 試合の行方を占う予兆は、最初の1ポイントに、すでに塗り込められていたかもしれない。

 大坂のサービスの跳ね際を捕らえるベンチッチのリターンは、測ったようにラインに乗る。大坂も下がらずボールを打ち返すが、ベンチッチのバックの打球、さらには続けて放たれるフォアのクロスも、ことごとく白線にきれいに乗った。ヒザを曲げ、腰を落として大坂も打ち返すも、差し込まれたぶんだけフォアの強打はサイドラインを逸れる――。

 いきなりの高質で高速な打ち合いから始まったこのゲームは、大坂のダブルフォールトでベンチッチの手に渡った。ただその3ゲーム後には大坂がブレークバックし、以降は並走状態へと突入する。第1セットのゲームカウント5-5の時点でのスタッツは、総獲得ポイント数が、大坂31のベンチッチ30。ウイナー/アンフォーストエラー数は、大坂14/9で、ベンチッチが11/6。両者ともに攻撃的かつミスの少ない緊迫の拮抗は、これらの数字が物語っていた。
 その均衡に亀裂が走ったのが、続く第11ゲーム。ベンチッチは、バックの逆クロスからボレーにつなげてブレークポイントをつかむと、即座にバックのウイナーでブレーク奪取。

 さらに直後のゲームでも、前に出ながらオープンスタンスでストレートに打ち込む、バックのウイナーでポイント先行。さらには逆クロスのウイナーなど、特にバックでの球種とコースの多彩さで、大坂を翻弄しはじめた。第1セットを7-5で奪ったベンチッチは、その流れを第2セットにも持ち込む。

  対する大坂は、前哨戦のシンシナティで負ったヒザの痛みもあり、フットワークが本来のそれでない。ラリーを長引かせたくないとの思いからか、強打を左右に打ち込むも、それはカウンターパンチャーのベンチッチにしてみれば、むしろ大好物だ。ベースラインから下がることなく、踏み込みながら放つベンチッチの鋭い打球に、大坂の足が徐々についていかなくなる。第5ゲームをブレークされた大坂は、トレーナーを呼び痛み止めを飲むが、効き目が出始めるより先に試合は終焉を迎えた。
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試合後に語られた大坂の心境とは…