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海外テニス

「間違いなく強い」17歳の錦織圭と対戦し、そう確信した男は、現在NYの医療最前線で戦っている

東真奈美

2020.06.13

17歳の錦織圭。まだチャレンジャーを主戦場としていた。(C)GettyImages

17歳の錦織圭。まだチャレンジャーを主戦場としていた。(C)GettyImages

 約13年前、17歳の若者2人がテニスのツアー予選で顔を合わせた。後に1人はトップ選手に成長し、もう1人はラケットをメスに持ち替えて医者となった。非常事態が起きている現在は、ニューヨークの病院で新型コロナウイルス感染症と最前線で戦っている。30歳の医師ライアン・サッチャー氏を、ATPの公式サイトが取り上げた。

 2007年、ロサンゼルスのATPツアー予選、これはサッチャー氏にとって、初めてのツアーレベルの大会だった。17歳で予選のワイルドカードがもらえていていることから、将来を嘱望されていた選手であったことがわかる。そのサッチャー氏が戦った相手とは、当時394位の錦織圭だった…。

 サッチャー氏は「(錦織に関して)日本出身の将来を期待される若手選手ということ以外は知らなかったし、彼のプレーを見たこともなかった。客席に自分のファンが応援に来てくれているなと思いながらコートに立った」と、錦織との対戦時の第一印象を語った。

「最初の2、3ゲームはかなりの接戦だったと思う。実際、自分はとても良いプレーをしていた。良いサーブを打てていたし、少しサーブ&ボレーもして、本当に良いプレーができていたんだ。でも、錦織選手からポイントを奪うのは、とても難しかった」と試合を振り返った。

「この男は、間違いなく強い」と試合中に感じたサッチャー氏は、1-6、4-6のストレートで敗れた。勝利した錦織は、予選を勝ち上がり、ツアー本戦初出場を果たす。その後、1年も経たないうちに、デルレイビーチ・オープンで初のATPツアーのタイトルを獲得し、トッププレーヤーとして世界の人々を魅了していく錦織の姿は、周知のことだろう。
 
「彼は信じられないほど礼儀正しく、とてもフレンドリーだった。その後も試合で顔を合わせる機会があったけど、彼は自分のことを覚えていてくれて挨拶を交わした」。サッチャー氏にとって錦織は、コート外でも記憶に残っている選手だった。
    
 彼はその後、錦織とは違う道を進んでいくことになる。スタンフォード大学を卒業後、プロとして少しの期間活動したが、その後に医療の道を歩んだ。

 進んだ道は違っても、ライアン・サッチャー氏はテニスで得た経験を生かしている。冷静に全体の状況を把握し、自分の感情を処理する方法を身に付けたことが、患者の治療に向き合う時も新型コロナウイルスと対峙する時も、最善を尽くし、実行するプレッシャーに打ち勝つ強さとなった。

 10代にテニスを通して顔を合わせた2人が、その経験を生かして、それぞれの舞台で戦っている。ジュニア時代にテニスを通して得られた経験は、トップ選手にならなかったとしても、きっとその後の人生を豊かなものにしてくれるだろう。

文●東真奈美

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