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錦織を撃破した21歳デミノーの「逆算のフットワーク」によるカウンターショットとは?【テニスレッスン/ヤングスターのスゴ技を盗め】

スマッシュ編集部

2020.06.18

厳しいコースを突いた錦織のボールに対し、計算されたフットワークで追いつき、カウンターを放つデミノー(写真は2019年全米の錦織戦)。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 男子テニスのランキング表を見ると、ノバク・ジョコビッチ(1位/32歳)、ラファエル・ナダル(2位/33歳)、ロジャー・フェデラー(4位/38歳)など、オーバー30勢が上位を占める。だが一方で、ステファノス・チチパス(6位/21歳)やアレクサンダー・ズベレフ(7位/22歳)といった、若手たちも負けじと存在感を放っている。

 月刊スマッシュでは、「若い、うまい、強い」の三拍子そろった若獅子たちのテクニックに注目。「ヤングスターのスゴ技を盗め」と銘打ち、その解説を、かつて史上最年少(17歳9カ月)で全日本テニス選手権に優勝している谷澤英彦氏にお願いした。

 今回取り上げるのは、アレックス・デミノー(21歳/オーストラリア)。2019年はツアー決勝に5度出場し、3大会で優勝するなど絶好調の注目株で、昨年の全米オープン3回戦では錦織圭を破っている。その際にデミノ-が見せた、高度なカウンターショットについて解説しよう。

 デミノーは、厳しいコースに飛んで来た錦織のショットに対し、走り込んで力強いカウンターショットを放っている。ここで注目したいのが「逆算のフットワーク」だ。打点となる4歩目から逆算し、3歩目のサイドおよび2歩目のクロスステップ、そして1歩目の踏み出しまでを計算しながら移動している。
 
 また、打点となる4歩目の勢いをボールに伝えるものの、そのまま走り抜けてしまうと次の打球には対応できなくなる。そのため相手のボールが返ってきたら、さらにカウンターを放つため、その場で踏みとどまり次に備えている。

 カウンターショットは、チョコチョコと歩幅を合わせにいくと、走り込む勢いがつかなくて貧打になりかねない。ダイナミックなフットワークでボールに飛び込んでいくからこそ、鋭い打球が生まれる。そのためには打点から逆算した1歩目を、適切な場所へタイミングよく踏み出すことが重要になる。

 しかもランニングショットだからといって、走り抜けてしまわないのがデミノーらしいテニス。打球後に踏みとどまって体勢を立て直し、相手からボールが返ってきたら、さらにカウンターを取りにいく。一般の方には難しい動きだが、「常に次の展開に備える」という考え方は見習うべきだろう。

アレックス・デミノー(Alex de Minaur)
1999年2月17日生まれ(21歳)。オーストラリア出身。身長183cm、右利き、バックハンドは両手打ち。2018年は1シーズンで177位も順位を上げATP最優秀新人賞を受賞。19年はツアー初Vを含む3勝をマーク。駆け引きに長けたテニスIQの高い選手で、19年全米オープンでは3回戦で錦織を破っている。英語のほかスペイン語とフランス語を話すトリリンガル。自己最高ランキング24位(19年3月4日付)。

※スマッシュ2019年12月号から抜粋・再編集

【PHOTO】21歳デミノーが錦織戦で見せた「逆算のフットワーク」によるカウンターショット『ハイスピードカメラによる超分解写真』