海外テニス

「この試合、この1日、今この瞬間に、一番大切なものに集中…」王者ジョコビッチが示す“準備”の重要性と心構え【海外テニス】

中山和義

2020.12.31

グランドスラム(世界四大大会)17勝を誇るジョコビッチの言葉には、テニスの上達はもちろん、仕事やプライベートでも役立つエキスが溢れている。(C)Getty Images

 テニス界で長きにわたりトップランキングを維持する一流選手たち。そんな彼らが発する言葉には、テニスの上達はもちろんだが、仕事やプライベートでも役立つヒントが数多く隠されている。

 2020年の全豪オープンで連覇を達成し、4大大会の通算優勝回数を17へ伸ばしたノバク・ジョコビッチ。そんな彼を人間的に逞しくしたのは、子どもの頃に経験した戦争が大きく影響していると本人も認める。
 
 だが、それだけではない。幼い頃に抱いた夢へのこだわりと、それを叶えるための行動力も、彼をトッププレーヤーへと導いた原動力の1つである。

 ジョコビッチは4歳の時に両親が買ってくれた子ども用ラケットを使って、毎日何時間もレストランの壁にボールを打ち続けて遊んでいた。そしてある日、ピート・サンプラスがウインブルドンで優勝するのをテレビで見ることになる。その姿に心を奪われたジョコビッチは、

「いつの日か、あそこで優勝するのは僕だ…」

 と自分自身に誓った。それ以来、彼はトロフィーに見立てたプラスチック製の花瓶を持って鏡の前に立つと、「ウインブルドン・チャンピオンのノバク・ジョコビッチです!」
と自分が優勝した姿を鏡に映し出して遊ぶようになった。
 
 そんな彼の夢を応援するかのように、実家の前にテニス施設が作られた。ジョコビッチは、そこで行なわれるテニススクールの様子をフェンスの近くに立ち、毎日何時間もかぶりつくように見つめていた。

 するとその様子に気づいたスクールのコーチが、彼をレッスンに誘った。初心者の子どもを教えるつもりでいたコーチは、コートに現れた彼の姿を見て驚かされたという。5歳の子どもが持ってきたテニスバックの中には、ラケットや水筒以外に、リストバンド、替えのTシャツ3枚、バナナなど、プロ選手並みの用意がされていたからである。

 驚くコーチにジョコビッチは「テレビで試合を見て自分で用意した」と伝えた。この準備の良さと真剣に自分を見つめる表情から、すぐに「この子は特別な子だ」とコーチは気づいたが、実際にレッスンをしてその高い集中力と運動能力にさらに驚かされることになった。
 
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子どもの頃に抱いた夢に向かってどれだけ努力できるか?