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海外テニス

ジョコビッチ独走の流れがコロナ中断を挟んで急変。全米初Vのティームがビッグ3を脅かす存在に【2020男子ツアー回顧】

内田暁

2020.12.28

年頭の全豪ではジョコビッチが勝負師ぶりを発揮してティームに逆転勝ち。独裁時代は長く続くように思われた。(C)Getty Images

年頭の全豪ではジョコビッチが勝負師ぶりを発揮してティームに逆転勝ち。独裁時代は長く続くように思われた。(C)Getty Images

 ツアー中断前の男子テニスは、ノバク・ジョコビッチ独裁の四半期だった。

 今年産声を上げた国別対抗戦「ATPカップ」では、6戦全勝で母国セルビアを初代王者の座に牽引。しかも決勝では、シングルスでラファエル・ナダルを破り、ダブルスでもビクトル・トロイツキと組み勝利を得る、獅子奮迅の活躍を見せてである。

 続く全豪オープンでも、ジョコビッチの疾走は止まらない。6試合で1セットしか落とさぬ盤石の強さで、周囲に畏怖の念を抱かせつつ決勝へ。その頂上決戦の舞台で、全豪7度の優勝を誇る帝王に果敢に挑んだのは、準々決勝でナダルを破ったドミニク・ティーム。通算3度目のグランドスラム決勝で、3度目の正直となる戴冠を目指す次代の王者候補筆頭だ。

「僕ら若い世代は、とてもタフな時代にいる。優勝するためには常に、信じがたい“レジェンド”たちを倒さなくてはいけないのだから」
 
 決勝戦を控えたティームは、自身が生まれた時代の不運を、少しばかり嘆くかのような言葉をこぼす。それでも、長く“次世代の騎手”を務める男は、篤実な語り口調に矜持の色を込めて言った。「この数年間、僕の最大の課題の一つが、強い選手に勝った次の試合で負けてしまうことだった。だが経験を積み、このような状況に幾度も面しながら、僕は成長してきた」と。

 自らのこの言葉を、ティームは決勝の舞台で証明する。ジョコビッチ相手にセットカウント2-1とリードすると、第4セットでも第3ゲームでブレークポイントを手にし、悲願のトロフィーへと大きく前進しようとしていた。

 だが……後に両者が「あのポイント」と振り返る分岐点をつかみ取ったのは、奇策とも言えるサーブ&ボレーを試みた、ジョコビッチだ。

「サーブ&ボレーは、僕が得意なプレーとは言えない。滅多にやることもない。だからこそ、あのような状況では効果的な戦術だと思ったんだ」

 意表を突く一つのプレーが、相手の予測プログラムを破壊し試合の流れを劇的に変えうることを、ジョコビッチは経験から知っている。果たしてこの決勝戦も、そのような試合の一つとなった。
 

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