国内テニス

「女子でも何かできないかな…」土居美咲の思い描いたイベントが選手とファンの心を動かし開催へ!【国内テニス】

内田暁

2020.06.28

土居(左)と井上(右)の2人が中心となり動き出したエキジビションマッチ『ONE IROS――わんいろ――』の開催日が7月9日に決まった。写真:土居美咲

 5月30日――。

 日本の複数の女子選手たちが、『#あつまれテニスの森』、『#選手がイベントを作れるか大実験』などのハッシュタグをつけたコメントを、一斉にソーシャルメディアにアップした。

「何か面白いことが始まりそう」の言葉と共に、先陣を切って情報を公開したのは、土居美咲。何が起こるのか、どこに行き着くかもまだわからないこのイベントを、発進させた人物だ。

「7月に、選手たちが集まって練習試合や対抗戦をできないかな……?」
 
 そのような思いを彼女が抱くようになったのは、東京でも緊急事態宣言の解除の機運が見えはじめた5月中旬のことだった。

 新型コロナ感染拡大に伴い、世界のテニスは7月いっぱいまでの中断が決まっている。ただ予定通り8月にツアーが再開するなら、その前に、誰もが緊張感を持った中で試合をしてみたいはずだ。

 そのような思いを抱いていた折に、海外や日本国内でも、エキジビションマッチや賞金大会が開かれるとのニュースを耳にする。

「だったら、女子でも何かできないかな? 選手は関東在住者に限定し、8人くらい選手を集めて…」

 この時、彼女の中に具体的なビジョンがあった訳ではない。ただ、何となしに考えを巡らせ選手の顔を次々に思い浮かべると、「十分、できそうじゃない?」と思えてくる。
 
 ジュニア時代から親交のある井上明里から、「小堀桃子と練習してくれないか」との連絡が入ったのは、その思いつきにおぼろげながら輪郭が描かれ始めたころだった。現在31歳の井上は、現役ながら軸足を徐々に指導者にシフトし、現在は小堀のコーチを努めている。

 その小堀と練習した時に、土居は井上に「関東の選手を集めて、試合やイベントできないかな?」と話してみた。特に誘うという意図はなく、単なる世間話として口にした一言。ところが井上から返ってきたのは、「えっ、おもしろそうじゃない? できるんじゃない、それ!」という、前向きなものだった。

「正直、意外だったんです。明里ちゃん、そういうノリの人ではないと思っていたので」

 土居が抱いた若干の驚きは、そのまま実現へと突き進むブースターとなる。練習が終わった後には2人で、声をかける選手や開催時期などにつき、具体的に話し込んでいた。

 5月末のことである。
 
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土居自らが枠に捕らわれず様々な選手に声をかけていった