国内テニス

大坂なおみだけじゃない!日比野菜緒、土居美咲が、広島で開催中のWTAツアーで揃って快進撃中!

内田暁

2019.09.14

第1シードのシェイを破りベスト4へ進出した日比野菜緒。写真:内田暁

【花キューピットジャパンウイメンズオープンテニスチャンピオンシップス】
シングルス準々決勝/9月13日(金)
日比野菜緒(JPN) 6-4 6-3 シェイ・スーウェイ(TPE)

 テニスの試合をコートサイドから見ると、ベースライン後方からのテレビカメラアングルではわかりにくい、いくつかの要素が見えてくる。その最たるものが、ボールの高さや、回転だ。


 シェイ・スーウェイの打つボールは無回転に近いフラットで、ネットすれすれを通過する。
 対する日比野のストロークには高さがあり、ボールに鋭い縦回転がかかっていることが傍目にも明らかだ。それらこそが両選手の持ち味にして武器であり、だからこそ2人の対戦は、互いの武器でいかに相手の強みを封じるかの戦いでもあった。

 そしてその戦いに、日比野は見事に勝利する。初戦、そして2回戦といずれもフラット系のボールを打つ選手と対戦したことが、ある意味、この一戦への良い予行演習にもなっていただろう。

「前の試合の反省も含め、スピンの効いたボールでしっかり作り、あまり攻め急がない」ことを心に決め、入った準々決勝のコート。日比野の高い軌道のショットを、そして攻守一体となったプレーをシェイが嫌がっていることは、本来なら彼女が得意とするドロップショットやスライスなどの緩急が、あまり使われなかったことにも明らかだ。第1セットの第4ゲームでは、左右に走る日比野が守りながらもロブで快心のウイナーを奪う。すると続くゲームでは、バックを左右に打ち分けブレーク奪取。サービスもコースと球種を混ぜ、相手に的を絞らせず、第1セットはブレークを許すことなく先取した。
 第2セットも高い集中力を見せる日比野が、いきなりのブレークに成功。しかし直後のゲームをブレークされ、次のゲームはブレークポイントがありながら取りきれず。本人曰く「この試合で、一番しんどかった」局面が訪れた。
 この場面で日比野は、オンコート・コーチングをリクエストする。
「とにかく感情的になっていたので、話して落ち着きたかった」。 
 それが、主たる目的だった。

 この時に竹内コーチは、「サービスのコースは、機械的に打ち分けてくこと」、そして「リターン一発で決めにいくな」と助言したというが、日比野は「あまり覚えていない」と後に苦笑いする。それでも、潜在意識にコーチの言葉はしっかり刷り込まれていたのだろう。再びスピンの効いた高い軌道のボールで組み立て、ここぞという場面でトリガーを引くように、フォアの逆クロスを叩き込む。ブレーク合戦となった第8ゲームでは、サービスウイナー、そしてエースを連続で決めてキープに成功。自分の強みを信じ、やるべきテニスをやり遂げた日比野が、業師の技を封じ込めて快心の勝利を奪い取った。