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国内テニス

大会史上初の日本人頂上対決が実現!快挙の裏に隠されたファイナリスト日比野と土居の知られざる葛藤とは

内田暁

2019.09.14

「これで決勝だ!」勝利を決めた日比野は、両手を高々と掲げ、この日最高の笑顔を見せた。写真:内田暁

「これで決勝だ!」勝利を決めた日比野は、両手を高々と掲げ、この日最高の笑顔を見せた。写真:内田暁

【花キューピットオープン】
シングルス準決勝/9月14日(土)
日比野菜緒(JPN)4-6 6-0 6-3 Ⅿ・ブザルネスク(ROU)
土居美咲(JPN)6-4 6-3 Ⅴ・クデルメトワ(RUR)

 日比野菜緒と土居美咲が、広島開催の花キューピットオープンで、揃って決勝に進出。WTAツアー大会での日本人頂上決戦は、1997年のダナモン・オープン(ジャカルタ大会)で、沢松奈生子と吉田友佳が対戦して以来のことだ。

 日頃から同じ大会に出る機会が多く、コート内外でも時間を共有することの多い土居と日比野が、22年ぶりとなる日本人頂上決戦を日本で実現させたその原点も、似たところにあるかもしれない。

「どんな時にも、ポジティブな姿勢を維持する。気持ちを、すぐに切り替える」

 日比野が、今大会の好調のカギをそう明かせば、土居は「泥臭さくても勝つという気持ちの面を、去年たくさん学んだ。それが生きていると思う」と述懐する。

 両者ともに、苦境を超えて手にした精神的な強さ。二人が華やかな舞台へと至ったその出発点は、下部大会での戦いにあった。
「ポジティブな態度を維持して戦えば、私はそうそう負けない!」

 日比野がそう思えた一つのきっかけは、今年1月、全豪オープン後に出場したITF6万ドルの大会だった。その時の一つの試合で、彼女は自分の精神面が、いかにプレーや試合の行方を左右するかを実感する。その手がかりを確固たる実績へと確立するため、4月にはメンタルコーチに師事しはじめた。

 今大会の準決勝の対ブザルネスク戦も、精神面の成長が何より顕著にプレーに投影された試合だったろう。

 第1セットは緊張もあって思うようなプレーができず、「フラストレーションが溜まって、どうしようかと思っていた」と、後に苦笑いとともに日比野は明かした。それでも彼女は、第1セットは何が悪かったかを振り返り、「ミスをした時に態度がネガティブだった。ミスにとらわれず、次のことを考えていくようにしよう」と自分に言い聞かせる。

 武器である「スピンを効かせた高い軌道のボール」も無理に打とうとするのではなく、重心を落として打てば、自然と良いボールが行くことにも気がついた。だからスコアや流れにも心を砕かず、「とにかく、重心を落として走る」というこの一点に集中した時、結果として、第2セットは相手に1ゲームも与えず走り切る。

 第3セットは、最初のゲームで3連続ブレークポイントを逃すなど嫌な流れにもなりかけたが、やはりこの時にも、彼女は目の前のポイントと自分のやるべきことのみに徹した。

「これで決勝だ!」 

 その実感が初めて全身を駆け巡ったのは、マッチポイントで相手のボールがラインを割り、勝利が確定した瞬間だった。
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