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まさにクレーコーターの代表格、ブルゲラ。これほどのヘビースピンは現代では見られない!【レジェンドFILE25】

スマッシュ編集部

2020.08.15

極端に下から上にスイングし、ヘビースピンをかけたブルゲラのフォアハンド。エースを狙うよりも、高く跳ねさせることに心血を注いだ。写真:スマッシュ写真部

 1990年代中盤はスピード化が進んだ時代だが、クレーコートでは事情が違って、激しくトップスピンをかける選手が全盛を極めた。特にクレーを得意としたのがスペイン勢だ。

 基本的にアンツーカコートで育った彼らは「土は得意だけどその他はどうでもいい」というスタンス。その代表格が93、94年と全仏オープンを連覇したセルジ・ブルゲラだろう。彼の戦績を見てみると、全仏以外のグランドスラム大会ではベスト8以上が一度もない。

 ブルゲラは歴代のスペイン選手の中でも、とりわけヘビースピンにこだわった選手と言える。そしてブルゲラ以降のスペイン勢は、まずスローハードコートを克服し、徐々に速いサーフェスにも慣れ、その中からラファエル・ナダルという怪物が登場。今ではスペイン勢は男子テニス界で一大勢力を保持している。
 
 連続写真はブルゲラの特徴を最も表しているヘビースピンのフォアハンド。5コマ目を見てほしい。振り出した時のラケットとボールとの落差がこんなにもあるのだ。彼はスイングエネルギーのほとんどを下から上への要素に使い、スピン回転をかけまくった。

 ブルゲラと練習したことがある元全日本王者の増田健太郎氏は、「高くバウンドしたボールにラケットが届かないことがあった」と呆れるほど、ボールには強烈なトップスピンがかかっていた。エースを狙うことは滅多になく、とにかくボールを高く跳ねさせる。そして相手を後方に押し込み、ミスを誘ったのがブルゲラのテニスだった。

【プロフィール】セルジ・ブルゲラ/Sergi Bruguera(ESP)
1971年生まれ。ATPランキング最高位3位(94年8月)。グランドスラム通算2勝(RG:93、94年)。90年代に活躍したクレーコートスペシャリストで、ヒジを伸ばした独特のフォームが特徴。全仏では優勝2回、準優勝1回と活躍したが、他のGSは4回戦進出が最高成績。アトランタ五輪ではシングルスで決勝に進出するもアガシに敗れ、銀メダルに終わった。引退後は、現役時代のコーチでもあった父親の設立したテニスアカデミーの監督をしている。13~17年にはリシャール・ガスケのコーチを務めた。

編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部

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