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全米オープンの「バブル」は試金石になるのか?最長で約4週間の隔離生活に不安の声も【海外テニス】

内田暁

2020.08.23

全米に出場するには必ず『バブル』に入らなければならないが、選手に与える影響は未知数だ(写真は隔離された会場内)。(C)GettyImages

「バブル」――このシステムは、そのように呼ばれている。

 限られた人員を特定のエリアに隔離し、外部との接触を禁ずることにより感染拡大を防ぐ。食事から息抜きまで、選手や関係者全ての生活をバブル内で完結させることにより、スポーツ等のイベントを成立させる手法だ。

 新型コロナウイルスによる中断から5カ月ぶりに再開したテニスの男女ツアー、そして全米オープンも、このシステムを採用しニューヨーク市郊外のビリージーンキング・ナショナルテニスセンターで開催される。

 スポーツ界で「バブル」の呼称を広く世に知らしめたのは、米国バスケットボールリーグのNBAだろう。NBAは、22チームの選手及び関係者をフロリダ州のディズニーワールドに招き、バブル内の人には毎日PCR検査を実施。さらには『マジックバンド』と称されるリストバンドを配り、これにより個々人の行動範囲や接触した相手、体温や心拍数も常時把握している。

 テニスが実行しているのも、このNBAバブルと似たものだ。
 
 バブルの範囲は、会場及びオフィシャルホテル。そのバブル内に入る人員を、まずは3つの段階(=ティア)に分ける。

 ティア1は、オフィシャルホテルに滞在する人たち。選手とそのコーチやトレーナー、大会の主要スタッフや審判員もここに含まれる。

 ティア2は、選手用の食事を調理したり、会場でコート整備等をするスタッフ。選手との接触やオフィシャルホテルへの出入りが許されるのは、このティア2までだ。

 ティア3は、食事の運搬や、パーキングロット等で働くスタッフ。テレビ中継の技術者なども、ここに含まれる。
 
 バブルに入るためのプロセスも厳格だ。

 ティア1の人員はホテルに着くと同時にPCR検査を受け、結果が出るまでの約24時間は部屋からの外出禁止。陰性と認められた後は会場に行けるが、最初のテストから48時間後、さらにその後は4日に一度PCR検査を受ける。

 ティア2カテゴリーの人々も同様に、4日に一度のテストが義務。ティア3にはPCRテストはなく、毎日の検温がノルマだ。
 
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「バブル」の中にいれば安全は確保されるが……