海外テニス

大坂なおみ「とても良い仕上がり」日本人名トレーナーとのコンビ結成後、初試合で実感したフィジカルの進化

内田暁

2020.08.25

ウェスタン&サザン・オープンで初戦を突破した大坂。次戦は第16シードのダヤナ・ヤストレムスカ(ウクライナ)と対戦。(C)Getty Images

 この日12本目のエースを叩き込み、「カモン!」の叫びとともに2時間33分の戦いに終止符を打った。

 大坂なおみにとって、約6カ月ぶりの公式戦となる『ウェスタン&サザン・オープン』初戦の、対カロリナ・ムチョバ戦。

 第1セットはタイブレークで競り負けるも、第2セットは早々のブレークで奪い返し、第3セットは序盤で4ゲーム連取する。試合が進むにつれ精力的に走り回り、攻撃的かつミスの少ない盤石のプレーを披露。試合前の会見で語っていた「フィジカル面で、とても良い仕上がり」の言葉を証明するかのような勝利だった。

 3月以降ツアーが中断していたその間に、大坂が見せた最大の動きが、ストレングス&コンディショニングコーチの中村豊氏をチームに招いたことだ。

 サドルブロックやIMGアカデミーで実績を積んだ中村氏は、その腕をテニス・オーストラリアにも買われた経験豊かなトレーナー。特にマリア・シャラポワの個人トレーナー就任時には、短期間で彼女に悲願の全仏オープンタイトルをもたらし名を馳せた。

 その中村氏を大坂は、「とても厳格で常に情熱的」と笑顔で評する。「まじめで、いかにも日本人らしい感じ」という新トレーナーから、彼女は「練習のたびに、多くを学んでいる」とも話した。
 
 自らもプロを目指しテニスに没頭する10代を過ごした中村氏は、単にフィジカルを強化するだけでなく、上げた能力をテニスの動きと連動させることに長けたトレーナーである。その中村氏と共に、このツアー中断中に大坂が取り組んできたのは、機動力と可動域の向上。その練習成果は、6カ月ぶりの試合でもすぐに実感できたと大坂は明言した。

「走りながら身体を伸ばし、バックサイドの高い位置のボールを打つトレーニングを多くしてきた。今日の試合でも、腕を伸ばして多くのボールを打ち返せていたので、練習が生きていると感じた」

 さらに、恐らくはその成果を示す、興味深い数字がある。第2セット以降、大坂のアンフォーストエラーは減り、第2セットではわずか4本だったのだが、大坂自身もその数字に驚いたという。なぜなら、彼女の頭にはミスを減らすという考えはなく、むしろ攻撃的にプレーすることを心がけていたからだ。意識せずとも足を動かし、恵まれた体躯を目いっぱい伸ばしてミスせずボールを打ち返せるほどに、この試合での彼女は心身が整っていたのだろう。

 アンディ・マリーら複数の選手が予想していた通り、久々の公式戦はアップセットが多く、今大会では女子上位8シードのうち、すでに半数が姿を消している。その混戦模様の中、スコア的には接戦だが順当な勝利を手にした大坂のプレーには、過ごして来た充実の日々が表れていた。

文●内田暁

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