海外テニス

激しくなるテニスのフィジカルバトル。故障を防ぐために錦織圭が実践していたこととは?

久見香奈恵

2020.09.08

外国人選手のパワーと日々戦っているテニス選手たちは、回復の早さも重要。写真:THE DIGEST写真部

 年々、テニス界でも激しくなるフィジカルバトル。ノバク・ジョコビッチは柔軟で耐久力のある筋肉を駆使し、コートを走り回りポイント獲得につなげるシーンが多く見られる。

 フィジカルトレーナーの出現によりアスリートの身体は進化し「速く・強く・長く」とパフォーマンスが向上し続けた。同時に一つしかない自身の身体をよく理解し、ケガをしないように調整法などを指導してくれるコンディショニングトレーナーもツアー生活には欠かせない存在となっている。

 世界ランキングトップ5の選手は、年間15大会~23大会に参戦し、平均約70試合を戦う。毎週のように世界中を転戦するツアー生活の中で、これだけの試合数を戦える身体を維持するには、どのようなことに気をつけているのだろうか。錦織圭のコンディショニングトレーナーとして2018年までの6年間、ツアー生活を支えた中尾公一氏に話を聞いた。
 
「まず日本人選手が目の当たりにする海外選手との差は身長です。錦織は178cm、西岡は170cmです。トップ選手の平均的な身長が185cmから188cm。ネットがあるスポーツにおいて、背の低い選手はサービスのフリーポイントが少なくなるので、そのぶん走らなければならず、不利になる部分だと思います」
 
 海外選手との体格差から生まれるパワーの差、骨格の違いから歩幅の数も変わってくるため必然的に動く量も増える。ポイント取得の方法もパワーではなく、ラリーが長くなる傾向にあり、連戦からの疲労蓄積によりケガのリスクが出てくるのはさだめとも言えるだろう。

 中尾氏はこの現状に、トレーニング量も大切だが同時に回復要素も十分に考慮し、疲労と回復のバランスを図る作業が必要不可欠だと語る。

「大事なのは試合の疲労度との駆け引き。トレーニングにしても、どこまでやったらいいのかという部分が一番難しいところだと思います。疲労が勝りケガをしてしまうことを避けるためにも、私は回復要素である睡眠と栄養の2つを大切にしてきました。錦織の場合は8時間の睡眠をとるようにしてきました。昼寝も30分~40分することで回復しやすくなります。ジュニア選手の場合は年齢差にもよりますが、8時間~10時間取るほうが良いでしょう。栄養面では、運動直後の栄養摂取は吸収率が良いため、試合や練習後、必ずすぐにリカバリードリンクを摂取するようにしていました。そして、その後クールダウンや記者会見などを終え、できる限り速やかに食事をするようにしていました」