「今週は、いい大会になるんじゃないかな」
ストラスブール大会のドローを見た時、ふとそんな予感が彼女の胸をなでた。
特に、根拠があったわけではない。ただそれは、過去にも幾度か覚えのある、確信にも似た予兆だった。
20歳でタシケントオープンで初優勝した時や、昨年の広島でツアー2勝目を手にした時もそうだった。あるいは優勝せずとも決勝まで勝ち上がった時には、必ずと言ってよいほど、同じような兆しを覚えている。だからこそ「今回もきっと良いことがある。チャンスをつかむべき時が巡ってきたんだ」と思えたのだと、日比野菜緒は言った。
今大会が「つかむべきチャンス」と思えたのは、開幕の数日前までは「何のためにヨーロッパに来たんだろう」と、暗澹たる想いを抱えていたことと関係しているだろう。ストラスブール入りした日比野を待っていたのは、本戦はおろか、予選にも入ることができない現実。ただ日が経つにつれ、不参加の選手の数が増え自身の順位が繰り上がっていった。
「これはもしかしたら、予選に出られるかな……」
そう感じていた開幕前日、大会側から伝えられたのは「本戦に入った」との報。日比野は予選リストの動向しか見ていなかったが、本戦側でもリストには大きな動きがあったのだ。
全く予期していなかった、まさかの本戦出場。その本戦の初戦の対戦相手は、2017年全米オープン優勝者にして、2018年全仏準優勝者でもあるスローン・スティーブンスである。
ところがその名を見て、日比野は「ラッキー」と喜んだ。スティーブンスが実力者なのは疑いの余地はないが、ツアー再開後はまだあまり勝てていない。「これはチャンスだ」と自身に期待しつつ、彼女はコートに向かっていた。
そして予感は、現実となる。実際に対峙すると、確かに個々のショットの質の高さやスライスを用いるタイミングの巧みさに、さすがと思わされることは多々あった。ただそれ以上に、テニスに向かう姿勢や勝利への執着では、自分が勝っていると確信した。
さらには技術面でも、ツアー中断期間中に取り組んできたことが、実を結んでいるとの感覚をつかんでいたという。
その成果が、「ミドルクロス」。ミドルクロスとは、サービスラインあたりの深さで、サイドライン際を狙うクロス。戦術の幅を広げるために習得を目指し、竹内映ニコーチからはまさに、「クレーコートで特に生きる」と言われていたショットでもあった。
ストラスブール大会のドローを見た時、ふとそんな予感が彼女の胸をなでた。
特に、根拠があったわけではない。ただそれは、過去にも幾度か覚えのある、確信にも似た予兆だった。
20歳でタシケントオープンで初優勝した時や、昨年の広島でツアー2勝目を手にした時もそうだった。あるいは優勝せずとも決勝まで勝ち上がった時には、必ずと言ってよいほど、同じような兆しを覚えている。だからこそ「今回もきっと良いことがある。チャンスをつかむべき時が巡ってきたんだ」と思えたのだと、日比野菜緒は言った。
今大会が「つかむべきチャンス」と思えたのは、開幕の数日前までは「何のためにヨーロッパに来たんだろう」と、暗澹たる想いを抱えていたことと関係しているだろう。ストラスブール入りした日比野を待っていたのは、本戦はおろか、予選にも入ることができない現実。ただ日が経つにつれ、不参加の選手の数が増え自身の順位が繰り上がっていった。
「これはもしかしたら、予選に出られるかな……」
そう感じていた開幕前日、大会側から伝えられたのは「本戦に入った」との報。日比野は予選リストの動向しか見ていなかったが、本戦側でもリストには大きな動きがあったのだ。
全く予期していなかった、まさかの本戦出場。その本戦の初戦の対戦相手は、2017年全米オープン優勝者にして、2018年全仏準優勝者でもあるスローン・スティーブンスである。
ところがその名を見て、日比野は「ラッキー」と喜んだ。スティーブンスが実力者なのは疑いの余地はないが、ツアー再開後はまだあまり勝てていない。「これはチャンスだ」と自身に期待しつつ、彼女はコートに向かっていた。
そして予感は、現実となる。実際に対峙すると、確かに個々のショットの質の高さやスライスを用いるタイミングの巧みさに、さすがと思わされることは多々あった。ただそれ以上に、テニスに向かう姿勢や勝利への執着では、自分が勝っていると確信した。
さらには技術面でも、ツアー中断期間中に取り組んできたことが、実を結んでいるとの感覚をつかんでいたという。
その成果が、「ミドルクロス」。ミドルクロスとは、サービスラインあたりの深さで、サイドライン際を狙うクロス。戦術の幅を広げるために習得を目指し、竹内映ニコーチからはまさに、「クレーコートで特に生きる」と言われていたショットでもあった。