「30歳までは……。30歳あたりになると、『大丈夫かな?』という思いがあります」。
【PHOTO】全仏オープン2020、錦織ら出場日本人選手の厳選ショット!
これは今から5年半前。当時25歳だった錦織圭に、「何年後くらいまでの自分が想像できるか?」と尋ねた時の返答である。
「30歳を過ぎると、身体とかモチベーションとか、色んな意味でまだ見えないので、不安なところがありますね。でも今現実を見ても、32歳でピークを迎えるような選手もいますし。なってみないと分からないですが」
あの頃まだ見えていなかった、30歳を過ぎた自分。その年齢を彼は、ケガからのリハビリや新型コロナ感染拡大によるツアー中断という、まさに「なってみないと分からない」不測の状況下で迎えていた。
31歳になって挑む2021年シーズンは、錦織にとって、新たなスタートの年になるだろう。一昨年10月に右肘にメスを入れ、その後のコロナ禍を経てコートに復帰したのが昨年9月。結果だけを見れば、昨季は4大会戦い2勝4敗の戦績に留まったが、目指すテニスがいかなるものかは、コート上の彼のプレーが何より雄弁に語っていた。ネットに出る機会が、以前よりも明らかに多い。しかも定石的には、ネットプレーの優位性が低いとされるクレーコートでだ。
その変化が最も顕著に見られたのが、全仏オープン初戦の対ダニエル・エバンス戦。フルセットの死闘となったこの試合で、錦織がネットに出た回数は66にも至り、そのうち39回をポイントにつなげている。ネットで奪ったポイントは、総獲得ポイントの実に3割近くを占めていた。あるいは、ローマ・マスターズで勝利したアルベルト・ラモス戦でも、ネットプレーで決めたポイントは12を数えている。これは総獲得ポイントのうちの、約14.5%。それまでの錦織は、総獲得ポイントにおけるネットポイントが8%台だったことを思うと、増加傾向にあるのは明らかだ。
このようなプレーの変化や志向は、昨季に入って急に現れたものではない。一昨年5月の欧州クレーシーズンの時にも、錦織は「目指すのは攻撃的なテニス。前に出るのを増やしたい」と明言していた。その主たる目的は、1ポイントに掛ける時間を短くし、試合時間を短縮すること。ケガの予防、そして連戦を勝ち上がっていくには、それは必須の課題だった。ただこの時点での錦織は、理想とするプレーの輪郭は描けるものの、どうすればそこに至れるのか、そしていかなる要素で構築していけば良いのかまでは、はっきり見えていないようだった。
【PHOTO】全仏オープン2020、錦織ら出場日本人選手の厳選ショット!
これは今から5年半前。当時25歳だった錦織圭に、「何年後くらいまでの自分が想像できるか?」と尋ねた時の返答である。
「30歳を過ぎると、身体とかモチベーションとか、色んな意味でまだ見えないので、不安なところがありますね。でも今現実を見ても、32歳でピークを迎えるような選手もいますし。なってみないと分からないですが」
あの頃まだ見えていなかった、30歳を過ぎた自分。その年齢を彼は、ケガからのリハビリや新型コロナ感染拡大によるツアー中断という、まさに「なってみないと分からない」不測の状況下で迎えていた。
31歳になって挑む2021年シーズンは、錦織にとって、新たなスタートの年になるだろう。一昨年10月に右肘にメスを入れ、その後のコロナ禍を経てコートに復帰したのが昨年9月。結果だけを見れば、昨季は4大会戦い2勝4敗の戦績に留まったが、目指すテニスがいかなるものかは、コート上の彼のプレーが何より雄弁に語っていた。ネットに出る機会が、以前よりも明らかに多い。しかも定石的には、ネットプレーの優位性が低いとされるクレーコートでだ。
その変化が最も顕著に見られたのが、全仏オープン初戦の対ダニエル・エバンス戦。フルセットの死闘となったこの試合で、錦織がネットに出た回数は66にも至り、そのうち39回をポイントにつなげている。ネットで奪ったポイントは、総獲得ポイントの実に3割近くを占めていた。あるいは、ローマ・マスターズで勝利したアルベルト・ラモス戦でも、ネットプレーで決めたポイントは12を数えている。これは総獲得ポイントのうちの、約14.5%。それまでの錦織は、総獲得ポイントにおけるネットポイントが8%台だったことを思うと、増加傾向にあるのは明らかだ。
このようなプレーの変化や志向は、昨季に入って急に現れたものではない。一昨年5月の欧州クレーシーズンの時にも、錦織は「目指すのは攻撃的なテニス。前に出るのを増やしたい」と明言していた。その主たる目的は、1ポイントに掛ける時間を短くし、試合時間を短縮すること。ケガの予防、そして連戦を勝ち上がっていくには、それは必須の課題だった。ただこの時点での錦織は、理想とするプレーの輪郭は描けるものの、どうすればそこに至れるのか、そしていかなる要素で構築していけば良いのかまでは、はっきり見えていないようだった。