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海外テニス

【レジェンドの素顔4】長い休養を取ったマッケンロー。復活の鍵は集中力を持続させるための体力|前編〈SMASH〉

立原修造

2021.02.12

1986年、マッケンローは半年以上の休養を取った。写真:THE DIGEST写真部

1986年、マッケンローは半年以上の休養を取った。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。

 1986年のウインブルドン、ベッカーが18歳で2連覇を達成するという圧倒的な強さを見せた。その時、マッケンローは長い休養に入っていた。彼にとって、プレーヤー人生最大のピンチを迎えていたためだ。マッケンローのナンバーワン復活はあるのか…。当時の彼を精神面から追った。

  ◆  ◆  ◆
 
 1986年1月から休養に入ったマッケンローをめぐって、さまざまな意見がテニスファンの間で交わされた。ときには、誰がウインブルドンのチャンピオンになるかといったタイムリーな予想より、はるかにスリリングな関心を呼び起こすほどだった。今さらながら、マッケンローという男の凄味を感じた人も多かっただろう。

 それにしてもなぜ、マッケンローはこの時期、長い休養を取ったのか。

 オーバーワークによる身体の故障、テータムの出産など、もっともらしい原因は確かにある。しかし、半年以上も休むというのは余程だ。休養は思いのほか長びいた。

 マッケンローはこの9年間、大会に出ずっぱりで、デビュー以来、まともな休養を取ったことがなかった。オフ・シーズンの少ないプロテニス界で、率先して自らオフ・シーズンをつくり出すのは結構大変なことだ。そうでもしなければ、到底、身体を休めることなどできない。

 しかし、もし、「精神面」がマッケンローの休養を長びかせていたとしたら、やっかいだ。そのことを少し考えてみよう。
 
マッケンローは愛情に飢えた男

 トッププロになる選手たちは、生活の大半の時間をテニスに捧げている。ボルグを例に見てみよう。超人的な集中力を誇ったボルグは、1日6時間以上といったハードな練習によって、自分を鍛え上げていった。初めてラケットを持った9歳の時から、彼はそんな生活に何ら疑問をはさまなかった。

 しかし、26歳という若さであっけなくボルグはコートを去って行った。そのあまりに早すぎる引退はいろいろと取り沙汰された。ただ、「人生にはテニス以外にも大切なことがある」という彼自身の言葉がすべてを語っている気がする。

 他のことに興味を持ち始めて、テニス三昧の日々にあきたらなくなったのだ。その途端に実力が落ちる。禁断の味を覚えてしまった者は、なかなか元の生活に戻りたがらないものだ。
 
 どんなプレーヤーにも、いつしかそんな日が訪れる。マッケンローにも――。
 

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