海外テニス

【現地発レポート】全豪オープン前哨戦での出来は?錦織は「2セット目は全部良かった」、西岡はダブルスで奮起〈SMASH〉

内田暁

2021.02.04

復帰戦でメドベージェフと内容の濃い試合を繰り広げた錦織圭。(C)Getty Images

「思ったより悪くなかったですね」という本人の言葉以上に、見ている人々は、錦織のプレーにうれしい驚きを覚えたのではないだろうか。

 入場者をキャパシティの25%と定めたアリーナに観客の姿はまばらだが、それでも錦織のショットが糸を引くようにコーナーを捉えるたび、「おおっ」というどよめきが沸き起こる。

 ATPカップ、日本対ロシアのエース対決。世界4位のダニール・メドベージェフを相手にまわし、第2セットは終盤まで並走状態が続いた。第3ゲームでは、錦織が立て続けにサーブ&ボレーやネットアプローチを見せ、メドベージェフにプレッシャーを掛ける。第6ゲームのリターンゲームでは、スライスや強打を巧みに織り交ぜて世界4位のタイミングを狂わせ、ミスを誘いブレークポイントを引き寄せもした。

 フットワークも軽快で、今や世界屈指の威力を誇る相手のショットを、左右に走って打ち返す。これが昨年10月以来の公式戦、そして、4日前に2週間に及ぶホテルでの完全隔離が明けたばかりの状況を思えば、錦織の姿が見る者の驚きを喚起したのは当然だろう。
 
 そのような思いは、ネットを挟んだメドベージェフも同じだったかもしれない。
「第1セットの彼は、多くの感覚を失っていたと思う。当然だよ。久々の試合だし、14日間も部屋に閉じ込められた後だったら、1日10時間トレーニングしていたとしてもうまくはいかないはず」

 立ち上がりをそう述懐する世界4位だが、試合が進むにつれ、錦織のレベルが上がったことも肌身で感じていた。「第2セットに入って、圭は確実にプレーのレベルを上げてきた。いろんなショットを織り交ぜてきた」というのが、対峙した者の率直な思いだった。

 当の錦織も、試合が進むにつれ、実戦の感覚が身体を満たすのを感じていたようだ。
「出だしはショットがガシャガシャしていて、あまりクリーンに打てなくて大丈夫かなと思っていたんですが、2セット目は全部良かったですね」と、試合後に穏やかな表情で振り返る。

 体力的にも問題なかったと明言する。サービスで後ろ足の右足を、軸足の左足に引き寄せて打つスタイルに変えた点も、「最近変えたので、まだしっくりきていない」と言いながらも、「もう少しパワーを出す」という狙いは実践できつつあるようだ。
 
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