海外テニス

大坂なおみが“新たな武器”を駆使して14連勝!「相手を分析しながら戦うのが楽しかった」〈SMASH〉

内田暁

2021.02.06

前哨戦の準々決勝で思い通りのプレーができ、試合後に笑顔を見せる大坂なおみ。(C)Getty Images

 センターに打ち込まれるサービスを、待ち構えていたかのようにバックハンドで打ち返し、相手のミスを誘ってみせた。その2ポイント後には、相手は大坂のリターンを恐れたかのようにダブルフォールトを侵し、次のポイントでも、大坂は狙いすましたバックのリターンでブレークを奪取。

 続くサービスゲームでは、ワイドに切れるスライスサービス、そしてセンターに叩き込む高速サービスで、次々にポイントを奪った。

 相手のイリナ‐カメリア・ベグは、もはや打つ手がないといった風情で、首を振りうなだれる。第1セットの競った展開から一転、第2セットは大坂が5ゲーム連取の電車道。終わってみれば7-5、6-1。試合時間1時間16分の圧勝で、世界3位が準決勝へとコマを進めた。

 試合後の大坂は、オンコートでも会見室でも、饒舌だ。その理由は単に勝っただけでなく、「相手を分析しながら戦うのが楽しかった」点にこそある。

 ベグと大坂は、今回が初対戦。サービスもストロークも、やや独特のフォームとタイミングで打つルーマニアのベテランは、コースが読みにくい選手でもあるだろう。

 現に大坂も立ち上がりは、その球質やスピード……、特にサービスに苦しめられたことを認めている。

 ただ彼女は、それを苦痛ではなく、パズルを解くような楽しみへと転換した。

「第1セットで得た様々な情報を組み合わせ、第2セットでは自分が何をすべきか、明確なプランを思い描いてプレーができた」

 そのように、相手を分析することが「どんどん上手になっている気がするの」と、彼女は照れたように笑みをこぼした。
 
「相手を分析できた」の言葉は、実は大坂が3回戦後に挙げた勝因でもある。この時の対戦相手は、同世代のケイティ・ボールター。対戦は2年半ぶりで、しかもその時は芝での試合だった。

 ボールターとの久々の対戦で、大坂は2つのブレークを許し第1セットを失う。だが第2セット以降は、明らかにサービスゲームでの攻め方を変えた。その戦術や心理面での変化を、大坂は次のように説明する。

「第2セットに入って緊張が解け、相手を分析できるようになった。彼女はフォアハンドが良いので、セカンドサービスをフォアサイドに打ったら簡単にリターンウイナーを奪われてしまう。だから自分が打ちたいと思う以上に、相手のバックに打つようにしたの」

 分析し、戦術を立案し、そして実戦する――それらのプロセスを経て彼女は、昨年から続く連勝を14に伸ばした。

 全豪オープンを迎える前に、多くの実戦を望む大坂が次に対戦するのは、今大会好調のエリーゼ・メルテンス。直近の2つの対戦では大坂が快勝しているだけに、相手は綿密な策を練ってくるだろう。

 雪辱を期する実力者相手に、大坂はいかに「分析力」を発揮するのか?

 ファンにとって、そして恐らくは本人にとっても、新たにして楽しみなチャレンジが待っている。

現地取材・文●内田暁

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