海外テニス

「半分は実現可能だった」全豪ディレクターが明かす“ジョコビッチ待遇改善要求”の真相〈SMASH〉

中村光佑

2021.02.27

ジョコビッチによる「完全隔離選手」に対する待遇改善案は、全てが無謀な提案ではなかったようだ。(C)GettyImages

 テニスの四大大会『全豪オープン』のトーナメントディレクターを務めたクレイグ・タイリー氏が、世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)によって行なわれた隔離措置下での待遇改善要求について、その裏側を語った。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、開催地のメルボルンとオーストラリア南部のアデレードに分ける形で選手全員に計14日間の隔離措置を命じた今年の全豪オープン。

 そうした中、メルボルンでは現地着のチャーター機から新型コロナの陽性者が確認され、濃厚接触と判断された72人の選手が、外出や屋外練習を一切許されない完全隔離を強いられた。

 この状況を鑑みたジョコビッチは、完全隔離に追い込まれた選手たちを救おうと、隔離期間を短縮することや、彼らをコート付きのプライベートハウスに移動させることなどを要求するため、全豪オープンの主催側にいくつかの待遇改善案を提出した。

 だが、結果的にビクトリア州政府は「濃厚接触者に対するルールに変更はないし、内容を変えることもできない」として、一連のジョコビッチの要求を却下していた。

 当時の状況についてタイリー氏は「ノバク(ジョコビッチ)はアデレードで隔離生活を過ごしている間に、裏では私に『WhatsApp』(インターネット通信アプリ)を通じてメッセージを送ってきたんだ。そこには完全隔離となった72人の選手を助けるための、数種類の提案が記されていた」と説明。
 
 また、そのメッセージの内容についてタイリー氏は「提案の半分は賢明なものではなく、簡単に許可できるものではなかった」としたものの、「実は残りの半分の提案は実現可能だった」と明かしている。

 最後にタイリー氏は「待遇改善要求によりノバクが多くの人を動揺させていたと言われていたのは理解できる」としつつも、「彼との対話はいつも良いものだった。他の人からの批判を受けて、かなりストレスが溜まっていたにも関わらず、今大会では最高のレベルでプレーをする彼を見てきたことを認めざるを得ない。やはりノバクは優秀な選手だ」とジョコビッチを称賛した。

 何はともあれ、今年の全豪オープンはタイリー氏の尽力がなければ、無事に終幕することはなかっただろう。来シーズンも新型コロナによる混乱が続く可能性はあるが、できる限り例年通りの形で同大会が開催されることを祈りたい。

文●中村光佑

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