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海外テニス

【レジェンドの素顔7】「氷山の女」と呼ばれたコート上とは対照に、情熱的なクリス・エバートの私生活|前編<SMASH>

立原修造

2021.05.01

コート上での冷徹なプレーとは裏腹に、私生活のクリスは情熱的でユーモラスな女性だったようだ。写真:THE DIGEST写真部

コート上での冷徹なプレーとは裏腹に、私生活のクリスは情熱的でユーモラスな女性だったようだ。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、元祖美少女テニス選手のクリス・エバートを取り上げよう。

 クリス・エバートはデビューしてからジョン・ロイドと結婚するまでの間、数多くの恋愛を経験した。特にジミー・コナーズとは婚約までするほどの進展ぶりだったし、バート・レイノルズとも“大人の恋”として長く交際を続けた。そこには、コート上では窺い知れないもう一人のクリスがいた。彼女はこと恋愛に関しては実に情熱的で、燃えるような思いを持った女性だったのである。

◆  ◆  ◆

数々のラブロマンスを咲かせた
 
 かつて、クリスと交際を続けたことのあるバート・レイノルズは、彼女についてこう語っている。

「マスコミはクリスのことを冷たい女だとか、無表情でおもしろみに欠けるとかいってるけれど、とんでもない間違いだね。ああいう記事に書かれている彼女は、本当の姿じゃないんだ。彼女はとても感受性が豊かで、ユーモアに満ちた女性だよ」

 誰もが、ときには、他人への評価を一方的に決めつけようとする傾向にある。相手のことをよく知りもしないのに、「あの人はああいう人間なのさ」と簡単に断を下すといった具合に――。それが有名人であればなおさらだ。

 “ウケ”を狙うマスコミによって流される片寄った情報を真に受ける結果でもある。固定観念を植えつけられた“被害者”の一人がクリス・エバートである。

 彼女はデビューするや否や、連戦連勝を続けた。しかし、若さに似合わぬ冷徹なプレーぶりから「氷山の女」とか「コート上の外科医」とかいうありがたくないニックネームを頂戴した。
 
「コート上での私は唇を引きしめ、毅然とした態度でプレーし、ちょっとした微笑さえ浮かべませんでした。勝つことを最優先に考えると、そうせざるを得なかったのです。キュートな笑顔でいつも観客を魅了したイボンヌ(グーラゴン)がうらやましく思いました。でも、私にはとてもできなかった」

 しかし、コート上はともかくとして、実生活でのクリスは、燃えるような感情を持った情熱的な女性なのである。「氷山の女」でも何でもなかった。

 そのことを多くの人たちが本当に知るようになったのは1982年のことである。

 この年、クリスは自伝を書いた。27歳という年齢を考えると、いささか早すぎる自伝ではあったが、そこには、若くして名声をかち得た一人の女性が経験した恋愛の数々と、それに苦しむ彼女の姿がつづられていた。

 毎週のように続く激しいトーナメントの中で、クリスほどラブロマンスを咲かせた女子プレーヤーも、ごく少ないのではないだろうか。
 
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