海外テニス

【レジェンドの素顔7】女子テニス世界1位、クリス・エバートの色とりどりな恋愛模様|後編<SMASH>

立原修造

2021.05.01

コナーズとの婚約破棄後のクリスは何事にも精力的に取り組んだ。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、元祖美少女テニス選手のクリス・エバートを取り上げよう。

 コート上での冷徹なプレーからついた「氷山の女」や「コート上の外科医」というニックネームとは反対に、クリスは情熱的な私生活を繰り広げていた。お互いのテニス人生を考えて結婚を断念せざるを得なかった初恋の相手、ジミー・コナーズに失恋したクリスのその後の恋愛模様を見てみよう。

◆  ◆  ◆

同じ失敗をくり返したくない

 それからのクリスは、数多くの恋をした。フォード大統領の息子ジャック、超売れっこ俳優のバート・レイノルズ、同じテニスプレーヤーのビタス・ゲルライテス。婚約破乗という不幸な出来事を乗りこえて、コナーズともフランクなつき合いができるようになっていた。

 この頃のクリス(1975年からの4年間)は、テニス一本で過ごしてきた少女時代のうっぷんを一気に晴らすかのように、何事にも果敢にチャレンジした。恋愛に対しても、決して臆病にならず、積極的だった。
 
 たとえば、バート・レイノルズのときがそうだ。出会いのきっかけを作ったのはクリスの方だった。

 1976年4月のある日、クリスはニューヨークの有名なレストランで友人と食事をしていた。普段は酒をあまり口にしないクリスも、そのときはワインやリキュールを飲んで、とてもいい気分だった。

 食後に支配人が来て、今夜はここでパーティーがあるのでお早めにお引き取りいただけませんか、と言った。聞くと、パーティーの出席者の中にバート・レイノルズがいるという。クリスは酔いのおかげで、勇気百倍になっていたらしい。支配人に、バートにメモを渡してもらえないかと頼んだ。目の前のナプキンを一枚抜き取ると、「親愛なるバート様、ぜひあなたにお会いしたいのです」と書いて、支配人に渡した。宿泊先も教えておいた。

 でも、さすがにバートから連絡があるとは思えなかった。この頃のバートといえば、出る映画がすべて大ヒットの大物スター、しかもプレイボーイとしても有名で、いくら女子テニス界のナンバーワンとはいえクリスに電話をかけてくるとは考えにくかった。
 
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