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海外テニス

【プロの観戦眼4】「守備と攻撃を同時にする」ジョコビッチの“指導外バックハンド”を見よ――増田健太郎<SMASH>

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2021.05.13

着地と打球がほぼ同時のジョコビッチの規格外バックハンド。右下は増田健太郎プロ。写真:THE DIGEST写真部

着地と打球がほぼ同時のジョコビッチの規格外バックハンド。右下は増田健太郎プロ。写真:THE DIGEST写真部

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のこのショット」がすごいという着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第4回は増田健太郎プロに話を聞いた。注目しているのは、1位在位期間が歴代トップとなり名実ともにテニス界のナンバー1であるノバク・ジョコビッチ(セルビア)のバックハンド。特に遠いボールに対して追いついて、足を大きく広げて着地すると同時に打つショットだ。

「着地と同時に打つというのは、指導する中では出てこない打ち方です。通常はバランスを保ってから打つものですから。バランスの取り方、足腰の強さ、身体の柔軟さがあるからできるのでしょう。この打ち方は突発的な故障が起きる要素が詰め込まれているので、見ていて怖い部分もありますが、これを難なくやってのけるのは、すごさしかありません」

 ジョコビッチの守備には定評があるが、このショットも要因の1つだ。「普通ならポイントを落としても仕方がない場面から、このショットを打って切り返し、ポイントを取るチャンスを残します。時にはこのショットでエースも取ります。返球するだけではなく、守備と攻撃を同時に行なっているわけです」。想定を超えるショットであることがわかるだろう。
 
 攻守ともに強いジョコビッチ最強時代が今後も続くのだろうか。「僕の中では最強はフェデラーですが、今はジョコビッチでしょうね。粘れて、打ち続けられる。オールラウンドに全てすごくいい。能力を円グラフにしたら1番大きな円ができると思います」

 しかし、時が流れているのは確かだ。今は期待できる若手が続々と登場している。増田プロに最も注目している有望選手を聞いてみた。

「ヤニック・シナーですね。19歳でツアー優勝して、マイアミのマスターズでは準優勝。19歳というのは、他の選手と比較しても2、3年早いです」。この2、3年の差はトップ選手の資質を見る上では重要なポイントである。技術面については、「若いのにショットの安定感がある。これは容易なことではありません。本当にすごい点です」

 ジョコビッチ時代はいつまで続くのか。ネクストジェン世代の時代はいつ到来するのか。これからも男子テニス界は盛り上がっていきそうだ。

◆Novak Djokovic/ノバク・ジョコビッチ(セルビア)
1987年5月22日、セルビア生まれ、モナコ在住。188センチ、77キロ、右利き、両手BH。1位在位期間が史上最長。グランドスラム優勝は18で3位。マスターズ1000の9大会全てに優勝している唯一の選手。

取材・文●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

【連続写真】ジョコビッチのオープンスタンスで打つ守備&攻撃力を合わせ持つバックハンド
 

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